IPMSM "Dモデル" 解析結果¶
以下に [CITE2012] により公開されている結果と,[paper2015] で紹介された解析結果をまとめます。
測定には1研究機関,解析には計6研究機関(IPMSMには5研究機関,Syn.RMには2研究機関,拘束試験には1研究機関)が参加しており,各研究機関の所有するプログラムにより解析を行いました。

図 9 Dmodel 研究機関と計算手法 (出典:[CITE2012])¶
測定条件¶
測定で用いたモータ制御ブロック図と,測定条件を示します。

図 10 モータ制御ブロック図 (出典:[CITE2012])¶
インバータ直流電圧 [V] |
200 |
キャリア周波数 [kHz] |
5 |
回転数 [min-1] (鉄損特性) |
1500 (500~2000) |
測定装置¶
試験装置概要図と測定装置仕様を示します。供試モータには固定子に熱電対を3箇所備え付け,銅損測定のための温度測定を行ったものです。

図 11 試験装置概要 (出典:[CITE2012])¶
装置 |
仕様 |
---|---|
インバータ及びダイオード整流器 |
9.1kVA 230Vrms 26.3Arms デットタイム4 \(\mu\) s |
トルクメータ(MAGTROL TM301) |
5Nm 20000 min-1 最小分解能0.1% |
パワーメータ(WT-1600) |
三相三線式 |
エンコーダ |
1000 pulse/rev 4逓倍 |
解析メッシュ図(例)¶
実機は 詳細 にあるようにステータ外側にケースをはめる溝と固定子拘束用のボルト穴があいています。 簡易 はそれらを省略したもので,ボルト穴を省略したケースもあります。
技術報告 [CITE2012] では,各研究機関で異なるメッシュを使用して解析を行ったものです。ここでは例として研究機関Bのメッシュ図を示します。

図 12 Dmodel 詳細2Dメッシュ図 (出典:[paper2011_2])¶

図 13 Dmodel 詳細3Dメッシュ図 (出典:[CITE2012])¶

図 14 Dmodel 簡易2Dメッシュ図 (出典:[paper2011_2])¶

図 15 Dmodel 簡易3Dメッシュ図 (出典:[CITE2012])¶
無負荷誘起電圧¶
無負荷時の結果として,無負荷誘起電圧( \(1500 min^{-1}\) )の結果を,測定波形と比較したものを示します。

図 16 Dmodel 線間誘起電圧波形の比較 (出典:[paper2015])¶
技術報告に記載はありませんが,参考までに研究機関Cの相誘起電圧波形とその成分を測定結果と比較して示します。
また,誘起電圧の1次成分より算出したd軸磁石磁束も示します。誘起電圧の一次成分からd軸磁石磁束を算出するために次式を使用しています。ここで,1500は回転数です。
コイル鎖交磁束をdq変換したd軸成分からも算出しています。

図 17 Dmodel 相誘起電圧波形の比較¶
次数 |
測定 |
解析 |
---|---|---|
1 |
41.133 |
41.096 |
3 |
8.398 |
8.394 |
5 |
1.411 |
1.141 |
7 |
0.514 |
0.158 |
9 |
4.845 |
6.442 |
\(\psi_m\) (mWb) |
|
---|---|
測定 |
160.4 |
解析(電圧の1次成分より) |
160.6 |
解析(コイル鎖交磁束のd軸成分) |
161.6 |
(参考)コギングトルク¶
技術報告に記載はありませんが,参考までに研究機関Cのコギングトルク波形を示します。peak-to-peakは二次元解析(2D)で0.079, 三次元解析(3D)で0.072です。

図 18 Dmodel コギングトルク波形¶
2D解析 |
3D解析 |
|
---|---|---|
peak-to-peak (Nm) |
0.0721 |
0.0792 |
インダクタンス特性¶
dq軸インダクタンス特性を示します。IPMSMではd軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqの差(Lq- Ld)によるリラクタンストルクを発生できるため,基本的にマグネットトルクのみである表面磁石構造のPMSMよりも平均トルクを大きくすることができます。
インダクタンスは測定,解析共にid, iq単独通電によりLd , Lqを分離して算出しています。

図 19 Dmodel インダクタンス特性 (出典:[paper2015])¶
トルク特性¶
定格条件(仕様値トルク1.8Nm)でのトルク―電流進角特性(3Arms)とトルクー電流特性(電流進角0deg)を示します。解析結果は算出したLd , Lqと \(\psi_m\) を用いてトルクを算出した結果です。なお,二次元解析結果です。トルク―電流進角特性では電流進角0deg時に測定結果(Measured)と解析結果(FEA)6.2%程の差がありますが,電流進角に対しておおよそ傾向は一致しています。トルクー電流特性では,測定結果(Measured)は電流が高くなるにつれてトルクがやや小さくなる傾向があります。Theoryは,\(T_m = N_p \times \psi_m \times I_q\) より算出したマグネットトルクです( \(N_p\) は極対数)。先に示したように測定結果と解析結果のd軸磁石磁束 \(\psi_m\) はほぼ同じであるため,図中ではほぼ重なっています。
トルク波形は研究機関Bによる結果であり,平均トルクは各研究機関と測定結果を比較したものです。平均トルクはおおよそ解析結果の方が測定結果よりも10%ほど大きいです。

図 20 Dmodel トルク―電流進角特性(3Arms) (出典:[paper2015])¶

図 21 Dmodel トルク―電流特性(電流進角0deg) (出典:[paper2015])¶

図 22 Dmodel トルク波形 (出典:[CITE2012])¶

図 23 Dmodel 平均トルク (出典:[paper2015])¶
PWM印加時の結果¶
定格条件での測定結果として,電圧と電流波形を示します。
インバータ直流電圧 [V] |
200 |
キャリア周波数 [kHz] |
5 |
回転数 [min-1] (鉄損特性) |
1500 |
電流振幅 [Arms] |
3 |
電流進角 [deg] |
25 |

図 24 Dmodel 相電流,線間電圧波形(測定値) (出典:[paper2015] を訂正)¶

図 25 Dmodel 相電流波形の測定結果・解析結果の比較 (出典:[paper2015] )¶
鉄損特性¶
解析での鉄損算出には各要素の磁束密度波形を用いて後処理にて算出する方法が簡便で精度よく算出できることが実証されています。 加えて,電磁鋼板中の渦電流損の周波数依存性を考慮するために,後処理一次源渦電流解析が併用されています。
測定では,入力から出力(トルク),機械損(ベアリングの摩擦損),電機子巻線の銅損を差し引いた残りを鉄損として算出しています。

図 26 Dmodel 回転数に対する鉄損特性 (出典:[paper2015])¶

図 27 Dmodel 永久磁石の渦電流密度分布および損失密度分布 (出典:[CITE2012])¶
鉄損特性の測定結果を示します。図中には無いがPlastic boltの結果も併せて示します。
Speed [min-1] |
Iron bolt |
Plastic bolt |
---|---|---|
1000 |
4.204 |
3.641 |
1250 |
6.010 |
4.432 |
1500 |
7.374 |
5.825 |
1750 |
9.503 |
7.101 |
2000 |
12.490 |
9.508 |