生体運動制御協同研究委員会
運動制御、進化学、生物学、理学療法学等諸分野の研究者を集め、生体筋骨格の概念を導入した新しい生体機構制御の理論体系を紹介しながら討議を深める。
調査期間:2013年5月〜2015年4月(2年間)
委員長:大西 公平(慶應義塾大学)
目的
掃除用ロボットやリハビリ用ロボットが一般に販売されるようになり、産業用途以外でのロボットの実用化が徐々に進んでいる。 医療福祉や生活分野でロボットの市場をさらに拡張するためには人間の運動機能を代替する高度な制御が必要であるが、未だロボットの動きは人間の自然な動きとは程遠い。 生物とロボットの制御に差異が生まれる主な理由は、生物が筋骨格で駆動するのに対してロボットがギアつきモータで駆動し、全く異なる動特性を持つことにある。 筋骨格の効果と意義について運動制御の視点から議論することにより、生物固有の高度な制御特性の一端の解明が期待される。 そこで運動制御、進化学、生物学、理学療法学等諸分野の研究者を集め、生体筋骨格の概念を導入した新しい生体機構制御の理論体系を紹介しながら討議を深めることを目的とし、本協同研究委員会を設置する。
調査検討事項
(1) 陸上および水中の動物の筋骨格を進化史的視点から調査する。
特に水中生物が上陸し、古代爬虫類へと進化した際の筋骨格とその制御系の変遷を検証するため、シーラカンスの筋骨格を詳しく調査する。
その知見をもとにヒトや動物の運動制御の原理を解明することを目指す。
(2) 陸上動物が普遍的に有する二関節筋や拮抗筋対の効果を工学的視点から検証する。
筋骨格に実装可能な様々なアクチュエータについて出力特性や制御特性を比較し、従来の関節モータ駆動に対する利点と欠点を明らかにする。
(3) 上記検討事項の成果に基づき、筋骨格アクチュエータとその制御の高度化がもたらす効果を制御工学の視点から試算する。
そして本技術体系の産業応用の可能性を検討する。例えば本技術が理学療法等の関連領域に応用される効果を検討する。
予想される効果
現在のヒューマノイド、福祉機器、人間機械協調系等々は関節単位の力学体系で構築されているが、実際の生体と異なるモデルをいかに精密に作ろうと、それらがヒトと深く関わるとき、筋骨格によって特有の出力特性、制御機能特性を発揮しているヒトとの間に齟齬を来すことは容易に予測可能である。 したがって生体機構モデルの機能特性について議論し精緻な解明を進めることは、身体運動に関わるあらゆる機械について、実用化技術の向上をもたらすことが期待される。 また、本委員会では関連諸分野の研究者・技術者が参加予定であり、様々な視点から学際的議論を進めることにより、諸分野の高度技術の融合とそれに伴う協奏効果を得られる可能性が高い。 これらの成果に基づいて生体機構制御の理論を導入した機械力学体系を再構築することにより、工業界、産業界の革新的発展に寄与することが期待される。