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G空間情報ソリューションを実現する測位技術調査専門委員会

G空間情報ソリューション(モバイル/ウェアラブル端末・ロボットと測位技術の融合)や,Multi GNSS(Global Navigation Satellite Systems)測位,屋内外シームレス測位,位置情報サービスにおけるセキュリティ保護における課題調査を通して,測位インフラの安定性・信頼性・活用可能性について議論します。

目的

 スマートフォンやタブレット端末を利用した位置情報サービスの社会的浸透や,建設・交通・物流分野におけるロボット技術の利用可能性が向上している点は,各種デバイスの高性能化や通信の高速化,ソフトウェアと地図データのオープン化が進んだ結果が大きい。さらに,測位システムに深く依存していることが大きな特徴である。もし,測位システムが不安定なものであったり,脆弱なものであったりすれば,上記の技術やサービスは極めて利用しにくいものとなる。そのため,測位技術には,測位環境という社会インフラストラクチャを整備するうえで,さらに高い安定性や信頼性が求められていく。測位技術の安定性や信頼性について議論するためには,G空間情報ソリューション(モバイル/ウェアラブル端末・ロボットと測位技術の融合)における課題調査や,Multi GNSS(Global Navigation Satellite Systems)測位における課題調査,屋内外シームレス測位における課題調査などが必要である。そのため,G空間情報ソリューションを実現する測位技術の調査を目的として,「G空間情報ソリューションを実現する測位技術調査専門委員会」を設置する。本委員会は,ユーザ側ではブラックボックスとなることが多い測位技術をキーワードに,G空間情報ソリューションを実現する測位技術を調査することを目的としている。

調査期間:2017年07月〜2020年06月(3年間)
委員長:中川 雅史(芝浦工業大学)
幹 事:吉田 将司(サレジオ高専)
幹 事:海老沼 拓史(中部大学)
幹事補佐:浪江 宏宗(防衛省 防衛大学校)
幹事補佐:齊藤 詠子(海上技術安全研究所)


背景

 現在の国内外においては,スマートフォンやタブレット端末を利用した位置情報サービスがすでに深く浸透しており,地図と位置情報を用いるG空間情報(地理空間情報)技術があたりまえのように利用されている。さらに,各種センサ・デバイスの小型化・低コスト化に伴って,近年は,ウェアラブル端末を利用した位置情報サービスが着目されている。日本の建設分野では,長年にわたって建設・災害現場で利用困難だったロボット技術がICTの劇的進歩に伴い,ロボット技術の利用可能性が高くなっていることに着目している。すでに国交省が提案するi-Constructionの取組みにおいて,労働人口減少社会における生産性向上を実現するために,無人航空機(測量用UAV)やICT建設重機の開発・導入が議論されている。さらに,東京オリンピックやその後に向けて,日本の交通・物流分野では,自動運転レベル4に向けた高度化や,ドローンを利用した物流の高度化が議論されている。これらのサービスや技術が深く依存する測位システムには,米国のGPSが位置情報取得の基本となる衛星測位システムの代表的なものとして挙げられる。さらに,GLONASS(ロシア)やBeiDou(中国),Galileo(欧州)など,様々な地球規模の衛星測位システムの整備が進められており,屋外における可視衛星数は増加している。さらに日本では,局所的な衛星測位システムである準天頂衛星(QZSS)の整備を進めており,屋外における測位の利便性は,大幅に改善される。衛星からの電波の届かない屋内における測位では,無線LANの電波による測位や,iBeaconによる測位,RFIDタグによる測位,GPS信号を模擬した屋内測位システムであるIMESなどの技術が実現している。


内外機関における調査活動

 一般財団法人衛星測位利用推進センターが,産業界・経済界における地理空間情報の利用拡大に向け,衛星測位関連企業・団体と連携して,GPSやGalileo,QZSSなど,次世代の衛星測位の利用に関する調査研究の推進を行っている。平成24年3月に政府で閣議決定された地理空間情報活用推進基本計画に基づき設立されたG空間情報センター(一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会が運用を行っている機関)が,産官学の様々な機関が保有する地理空間情報を円滑に流通し,社会的な価値を生み出すことを支援している。2017年に設立したi-Construction推進コンソーシアムでは,民間企業,有識者,行政機関などから会員公募されたメンバーによる産学官共同で,3つのワーキング(技術開発・導入WG,3次元データ流通・利活用WG,海外標準WG)を立ち上げたところである。


調査検討事項

(1) G空間情報ソリューション(モバイル/ウェアラブル端末・ロボットと測位技術の融合)における課題調査
(2) Multi GNSS(Global Navigation Satellite Systems)測位における課題調査
(3) 屋内外シームレス測位における課題調査
(4) 位置情報サービスにおける個人情報の取り扱いやセキュリティ保護について
(5) 今後の位置情報サービスとG空間情報の活用のあり方について


予想される効果

 測位技術は,スマートフォンやタブレット端末,ウェアラブル端末を利用したG空間情報サービス,建設分野における無人航空機(測量用UAV)やICT建設重機の開発および高度化,および,交通・物流分野における自動運転の実現など,測位システムに深く依存しているサービスや技術において必須なものである。これらのサービスや技術のインフラストラクチャにおいて求められる測位システムの安定性や信頼性の向上について,学術面と技術面で貢献することが期待できる。