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スマートグリッドの電気事業者・需要家間サービスインタフェース技術調査専門委員会

経済産業省が進める日本の電力市場創設の環境整備及び,電力エネルギーサービス事業者(アグリゲータ)の育成に協力し,国内電力エネルギーサービスを国際標準に従ってユースケース化し,その実現に必要な国内標準仕様を検討,文書化し,さらに,これに基づく戦略的な国際提案を行います。

調査期間:2016年10月〜2018年9月(2年間)
委員長:柳原 隆司(東京電機大学)
問い合わせ先


目的

電力需給最適化による電力安定供給及び,温室効果ガス削減による地球環境保全を狙いとして,スマートグリッドの開発,標準化,実証試験が世界的に展開されて久しい。しかし,重要社会インフラである電力供給システムの一大改革となるこの試みは未だその途上にある。日本でも,東日本大震災によるエネルギー需給環境の劇的変化に伴い,エネルギー安全保障と防災減災を目的とする実証事業,電力自由化に向けた電力システム改革及び,再生可能エネルギーを含む分散型電源の活用検討などが継続されている。これら努力にも係らず,電力需給最適化の方策,そのための技術開発は途上にあると言わざるをえない。

本委員会の前身となるスマートグリッドに関する電気事業者・需要家間サービス基盤技術調査専門委員会(以降,前委員会と記す)は,日本の電力需要家の視点に立ち,先行する国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission),米国国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)などのスマートグリッドに関する国際標準,国内外の実証試験などの調査検討を行ってきた。これら活動を通じ,前委員会は国内ニーズを取り纏めた日本発ユースケースと,これを実現するシステム要件などをIEC TC57などへ提案を行い,規格文書への記載を果した。また,経済産業省からの依頼を請け,「スマートグリッドに関する国際標準化重要アイテム20」のエネルギーマネージメントに関する審議団体として,標準化政策に協力してきた。

本委員会は,これまでの活動成果を引き継ぎ,経済産業省が進める日本の電力市場創設の環境整備及び,電力エネルギーサービス事業者(アグリゲータ)の育成に協力し,国内電力エネルギーサービスを国際標準に従ってユースケース化し,その実現に必要な国内標準仕様を検討,文書化し,さらに,これに基づく戦略的な国際提案を行う。

特に,国内の衆知を集め,電気学会のスタンスから日本の電力需給の最適化,国土強靭化に向け,日本の実態に副い,需要家の保有する規模,確実性,応答性などを備えた実用性ある分散型電源が電気事業者の大規模電源と連携し,日本の社会経済の持続的発展に寄与する電力供給体制のあるべき姿を検討する。これにより,国内の実態に適した電気事業者と需要家がともに,利益を享受できる社会システムの実現と,これを基礎とした電力エネルギーサービス事業の海外展開に貢献する。


調査検討事項

@ 調査専門委員会の活動方針
国内のスマートグリッドに関する電気事業者,需要家の連携による電力エネルギーサービス及び,その実現に必要な基盤技術について,国内関係ステークホルダの意見,実態などを整理し,関係仕様の検討作成を行い,国内外関係学協会,標準化団体への提案を行う。特に,本委員会内の審議結果を取り纏め,スマートグリッドの電気事業者,需要家間のインタフェース仕様の標準審議を担うIEC TC57 WG21を中心に,電気学会標準化推進室,IEC TC57国内委員会と連携して,国際標準提案を行う。

A 調査専門委員会としての調査検討事項
調査専門委員会の調査検討事項は下記とする。
(1) 国内の電気事業者と需要家の有する分散型電源を活用する電力需給調整,電力取引,託送などに関する電力エネルギーサービスの(ビジネス)ユースケース化及び,これら国内業界実態,関連機器制御,その運用などを考慮したシステム仕様の実現検討を行い,標準仕様書を作成する。
(2) これらは国内標準仕様(JEC-TRなど)として,サービスを取り纏めたシリーズ化を図る。
(3) 上記(1)の標準仕様検討は米国のOpenADRをベースに上記サービスを実現するための通信サービス,メッセージペイロードの精査などを行い,使用ガイドラインを検討,作成する。
(4) 上記(3)の検討において,電気事業者と需要家のドメインにおける既存の情報モデルに関する既存国際規格との整合性を考慮する。即ち,OpenADRのメッセージペイロード上の授受情報と既存情報モデルの国際規格上のクラス,アトリビュートとの対応付けを検討する。これによって,電気事業者と需要家とのインタフェース仕様を通信仕様と非依存化し,電力エネルギーサービスの国際的な普及の不確定な状況への対応を図る。
(5) 上記(3)の検討において,電力エネルギーサービスの関係ステークホルダのサービス市場への自由な参加と,情報授受の安全性を担保するため,関係ステークホルダの認証,情報交換時の暗号化などのセキュリティ仕様を検討する。
(6) 国内の需要家(地域)に存在する供給可能電力の規模,利用時の確実性,電力供給時の即応性などのある分散型電源の調査検討を行う。
(7) 以上の結果をIECなどの国際標準機関に提案する。

B その他の調査検討事項
電気学会内他技術委員会,特別研究グループと連携し,関係する調査検討事項の共同検討,検討成果に関する研究会,シンポジウムによる外部への発信を行う。また,電気学会以外の電子情報通信学会,電気設備学会,空気調和・衛生工学会など関係学協会との連携した検討,提案活動を図る。さらに,経済産業省をはじめとする関係行政機関とも連携し,日本のエネルギーサービスのあるべき姿に向けた活動を行う。


予想される効果

スマートグリッドに関する国際標準の審議は米国,欧州が先行しているが,未だ確定的な国際標準と言えるものが存在しない。本委員会はIEC,NISTなどで審議中のスマートグリッド上のエネルギーサービスの実現に必要な電気事業者,需要家間のインタフェース仕様を主な検討対象とする。これら審議中の国際標準と整合性を有する日本の電力エネルギーサービスのニーズを実現するシステム仕様の標準化提案は,日本の電力エネルギーサービスのガラパゴス化を防ぐとともに,関係するシステム及び,サービスのパッケージ輸出を可能するものと考える。また,ここで検討する電力取引に関係する電気事業者,電力エネルギーサービス事業者,需要家間のセキュリティ性を担保した円滑,安全な情報授受を実現する通信サービスは日本の付加価値ある電力エネルギーサービス基盤の構築に寄与するものと考える。