実世界ハプティクスの高度化に関する協同研究委員会
触覚の情報については,対象物への接触時に作用力に対して反作用力が発生する,
双方向性と呼ばれる特徴を考慮してメディアを設計しなければならない。
その制約を考慮したうえで触覚を処理するためにはバイラテラル制御をはじめとする様々な技術が必要となる。
情報伝達経路をフィードバックループに含む閉ループ系を構成する際の課題を解決するためには電気工学はもとより,
制御工学,情報工学,通信工学にまだがる複合的な研究領域で議論を進める必要がある。
そこで,さまざまな分野を専門とする研究者を集め,有機的な連携に基づく議論の場を提供することにより,
当研究分野のさらなる発展に寄与することを目的とする。
調査期間:2017年3月〜2019年2月(2年間)
委員長:辻 俊明(埼玉大学)
目的
これまでに、実世界における触覚現象の人工再現を取り扱う学問領域である実世界ハプティクスについて、基本原理の究明や実用化に向けた応用研究が行われ、外科手術への適用をはじめとした研究成果が創出されてきた。 実世界ハプティクスは、産業界における革新をもたらすことが期待される技術であると同時に、フレキシブルでパーソナルな人間支援においては、極めて重要なキーテクノロジーであり、更なる高度化が望まれている。 実世界ハプティクスは、複数の工学分野にまたがる複合的な学問分野であり、アクチュエータ、センサ、電力変換、モーションコントロール、通信・ネットワークシステムなど、さまざまな分野を専門とする研究者の融合による協同研究委員会を設置することで、 当研究分野のさらなる発展に寄与することを目的とする。
調査検討事項
(1) 高精度・広帯域な触覚抽出・再現を可能にするための実世界ハプティクスの総合デザイン技術の調査を行う。
(2) 多自由度化・フレキシブル化に不可欠なアクチュエーション、駆動方式、制御系実装技術について調査を行う。
(3) テレハプティクス(遠隔操作における触覚フィードバック)のための新しい通信方式ならびに遅延補償制御について整理する。
(4) 医療・福祉分野をはじめとする人間支援分野への展開、産業応用技術について調査する。
予想される効果
本協同研究委員会は、実世界ハプティクスという実世界における触覚再現の基本学理を新しい学術分野として体系化していくばかりではなく、最新の応用事例を広く研究者および産業界で共有することが活動の趣意である。 これにより、広範囲な応用事例への適用の可能性が示唆されると同時に、実用化のための多面的な検証例につながることが予想される。 本委員会では、医療や福祉分野における個人支援や身体性の時空間拡張などの分野や、人間の技能の保存・再現による職人技の継承、危険、苦渋作業からの開放などの応用分野に注力することで、新産業イノベーションの誘発が期待できる。