電気学会 基礎・材料・共通部門(A部門)

放電・プラズマ・パルスパワー技術委員会

目的・活動内容

放電・プラズマ・パルスパワー技術委員会は,2019年1月1日に,放電技術委員会とプラズマ・パルスパワー技術委員会の合併により新設されました。

設置の背景と目的

放電技術委員会が取り扱っている「放電現象」は,材料に高電界を印加することにより電流が流れるようになる非線形現象である。 発生させる環境(媒体),電界分布,電源構成により,その性状・性質は多岐にわたる。 エンジニアリング的な観点から言えば,電気を送るうえで,放電を起こさず確実に絶縁を保ち,また各種開閉機器内では確実に放電を切る技術が重要であり,その一方で,放電を活用する立場からいえば,いかにして効率よく所望の放電を発生させるかが重要な技術課題である。 放電技術委員会においては,気体,真空,液体,固体およびその複合材料中における放電現象の基礎から応用にわたり取り扱ってきた。

一方,プラズマ・パルスパワー技術委員会が取り扱っている「プラズマ現象」は,放電現象として古くから知られ,宇宙の構成,天体現象,地球高層における現象の理解ため,学問・技術が発展してきた。 その後,プラズマ現象の理解・基礎物理としての学問がさらに発達するとともに,その応用技術が急激に発展し,プラズマを利用する技術・機器として蛍光灯,プラズマ切断,放電スイッチング,さらには半導体製造工程における膜堆積,エッチング,表面改質などが発展した。 また,イオンエンジンなどのプラズマを利用するスラスターへの技術導入により宇宙分野においても注目されており,さらに制御熱核融合エネルギーの研究の進展は,プラズマ応用分野における大きなプロジェクトの一つである。 近年では,プラズマを利用したバイオ・医療・農業が着目され,殺菌・滅菌のほか,傷治療,止血,がん治療,食物促進栽培,遺伝子導入技術などが発展してきている。 加えて本技術委員会で取り扱っている「パルスパワー技術」は,エネルギーを時空間的に圧縮した形で用いて,非日常的な高エネルギー密度状態を達成するための技術として,主に欧米において慣性核融合や衝撃波などの新エネルギーや極限物性研究の基盤技術として発展してきた。 日本では,重イオンビーム慣性核融合研究などのエネルギー分野の開拓に加え,世界に先駆けて民生応用研究が活発に行われ,環境・リサイクル,材料,エレクトロニクス,バイオ・医療,農業・食品などの分野で実用化を目指した研究が進んでいる。 また,パルスパワーの作用はパワーの時間履歴に強く依存することから,パルスパワー発生・制御のための電源技術も進んでいる。

放電とプラズマ・パルスパワーは従来から関わりが深く,パルス放電プラズマや水中パルス放電プラズマを材料・環境・バイオへの応用に利用する活用など,両者に関わる研究者も少なくなかったが,最近その関連性は様々な点で益々増大している。 例えば,大気圧非熱平衡放電プラズマの生成法としてナノ秒パルスパワーの重要性が高まっている。 低気圧中においても,プラズマをパルス的に制御しようとする試みがなされており,放電プラズマ生成・制御のためのパルス電源技術の必要性が高まってきている。 このような情勢において,すでにここ数年,放電技術委員会とプラズマ・パルスパワー技術委員会(旧プラズマ技術委員会および旧パルス電磁エネルギー技術委員会)は連携した活動をしてきており,研究者交流が活発になっている。 これによってサブナノ秒パルス放電プラズマなどの新しい研究が始まり,さらに共同研究に繋がった例もある。

本国における研究活動を今後さらに強固な体制で組織的に進めるために,広範な放電現象の基礎と応用を行ってきた「放電技術委員会(ED)」と,広範囲なプラズマ現象やパルスパワー技術の基礎と応用を扱ってきた「プラズマ・パルスパワー技術委員会(PPP)」(旧プラズマ技術委員会および旧パルス電磁エネルギー技術委員会)を「放電・プラズマ・パルスパワー技術委員会(EPP)」として統合し,新たな融合を図るものである。 これにより,放電・プラズマ・パルスパワー分野における先進的融合発展を目指す。

研究調査対象技術分野

以下の観点から,放電・プラズマ・パルスパワー技術の重要性と魅力を広く社会に訴え,世界をリードできる技術者を育成し,この分野の一層の発展に寄与することを目的とする。