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周波数について
0. 周波数について
 ここでは、"周波数"に関して、いろいろな角度から説明します。電気の交流での周波数とは、電圧や電流が1秒間に正と負に切り替わる回数で単位は「Hz(ヘルツ)」を用います。交流の電気の周波数は、電圧とともに電気の良しあしを決める重要な要素です。さらに、周波数は発電と需要(負荷)とのバランスをみる重要な指標で、発電が需要を上回ると周波数は上昇し、下回れば低下します(脚注1)。周波数は時々刻々変化しますが、いろいろな制御などにより、適正範囲内になるようにされています。

1.なぜ周波数には50Hzと60Hzがあるのでしょうか
 世界的に家庭向けの電気の周波数は、50Hzか60Hzになっています。発電した電気を配るということで、エジソンは直流を使いました。しかし、1890年代初期には、「2.交流と直流、なぜ交流が広く使われているのでしょうか」に示すように交流の優位性が認められ、交流が広く採用されました。ただ、この頃は、16Hz から 133Hz のいろいろの周波数が使われていました。しかし、あまりに低い周波数では、電燈にチラツキが発生することや、発電機やタービンにとって当時最適と考えられたのが、50Hzや60Hzであったことから、二つのいずれかに統一されていったようです(脚注2)。ちなみに、北アメリカでは60Hzが、ヨーロッパを含むその他の国々では主に50Hzが使用されています。

2.交流と直流、なぜ交流が広く使われているのでしょうか
 電気には交流と直流があります。交流は電圧や電流が時間とともに波のように変化し正負が時間とともにいれかわります。一方、直流は電圧や電流が時間とともに大きくは変化しません(図1)。交流の代表は家庭や工場に送られてくる電気であり、直流は電池で使う電気です。一般の家庭の電気製品では、普通の蛍光灯のように交流をそのまま用いたり、電気製品の中で直流に変えて利用しています。ただ、製品ごとあるいはその中の部品ごとに適した直流の電圧があります。このため、たとえば、テレビでは、交流の電気をテレビの中のそれぞれの部品に合ったさまざまな電圧に変えてから直流に変えて利用しています。
交流 直流
図1 交流と直流
 次に、交流と直流にはどういった特徴があるのでしょうか? まず挙げられるのが、交流では、銅線と鉄から単純に構成される変圧器によって効率よく,また簡単に電圧が変えられることがあります。直流でも半導体を用いて電圧を変えることはできますが、効率が若干悪く、また、大容量の設備を作るには大変な費用がかかります。
ところで、電力を送る場合、その損失は電流の大きさの2乗(電流×電流)に比例して大きくなります。また、電力は、電圧と電流の積(電力=電圧×電流)になります。このことから、同じ電線を使った場合、同じ電力を送るのに、電圧を10倍にすれば、電流は1/10になりますので損失は1/100に小さくなります。このため、遠くから大容量の電力を送る場合、電圧を高くして送り、電気を使うところに近くなったらだんだんと電圧を低くしていき、最後は100Vや200Vまで電圧を下げることになります。
また、専門的になりすぎますので詳細は省きます(脚注3)が、容量の異なる多くの種類の発電機を多数接続する場合、交流では比較的簡単に運転できますが、直流ではきわめて困難になります。このため、交流が中心となり、以下や「5.直流送電はできないのでしょうか」で述べますように、直流はその特徴を活かせる個所で交流を補完するように用いられています。
直流送電の特徴を簡単に紹介します。直流では、交流と同じ電圧であれば、送電線を作るコストは交流よりは若干少なくて済みます。しかし、その両端に交流・直流の変換設備が必要になります。このため、直流では、長距離を送電する場合(たとえば500km以上))に有利になります。しかし、日本ではほとんどの場合がこれに相当しませんので、このような形での直流送電はありません。ただし、海底を横断する場合に限れば、この距離は短くなって数十kmから直流が有利になります(脚注4)。「5.直流送電はできないのでしょうか」も参照ください。

3.なぜ日本では東西の周波数を統一できないのでしょうか
 日本は、大まかにいって静岡県の富士川を境に50Hzと60Hzの2つの交流の電力系統が一つの国に両立する世界的に見てもきわめて珍しい系統となっています。このように、二つの周波数の電力系統が存在する経緯として、1896年に東京電灯が浅草発電所にドイツより50Hzの3相交流発電機を導入し、西日本では同年に大阪電灯が幸町発電所にアメリカのGE社から60Hzの交流発電機を導入したのが起源とされています。その後も、各地で電気事業が発足しましたが、当時はお互いにつながれていませんでしたので、各地域でいろいろな周波数の電気が使われていました。
 その後、第二次世界大戦中から戦後にかけても、何度か周波数統一の検討が行われましたが、一部の地域(九州や東北の一部)を除き、周波数統一は進みませんでした。これによって、結局は現在のように、50Hzと60Hzが両立することになりました。
 このように、大きな電力系統となる過程で、幾度となく周波数統一について検討はなされましたが、主に以下の理由のために断念してきました。すなわち、周波数を統一しようとしますと、既存の設備の改修が必要となり(脚注5)、それが長期にわたること、改修費用が莫大となること、改修期間中の電力の安定供給が難しくなること、さらにどちらの周波数を変えるか、その費用負担の方法などなど、解決すべき問題は山ほどあるからです。
 このように、周波数を統一するには、発電所や工場などの設備を取り替えないといけないのですが、仮に今のままで50Hz系統と60Hz系統を交流のままで電気的に接続したらどうなるでしょうか。その場合は、接続した付近の電圧は大きく変動し、非常に大きな電流が流れます。このため、接続を極めて短時間に切り離さないと、家庭の電気設備にも損傷が生じるでしょうし、発電機も運転できなくなり次々に停止していって、大規模な停電になるでしょう。

4.周波数の変動は何に影響するでしょうか
 周波数は、図2に示すように、発電と負荷(需要とも言います。使われている電気の全体の量のことです。)のバランスで定まります(脚注6)。発電が大きければ周波数は高くなって行き、負荷が大きければ周波数は低くなって行きます。たくさんの人が電気を使っていて、それぞれの人が電気をつけたり消したりしますので、全体の負荷は常に変化しています。このため、周波数も常時細かく変動しています。しかし、たいていの場合、その地域の定格周波数である50Hz、あるいは60Hzの±0.1Hzから±0.2Hz内になるよう、タービンの出力(脚注7)が制御されて発電を調節しています。
 さて、この周波数が大きく変動した場合、どのような影響が生じるのでしょうか。実際のところ、一般の家庭では最近はインバータ(脚注8)を利用した機器が多くなっていますので、あまり大きな影響は受けません。また、産業部門では、モータを多用しますが、その場合でもインバータ制御が普及してきていますので,このような工場などでは大きな影響はうけません。。
 ただ、インバータ制御でない機器では、モータの場合は周波数と回転数はほぼ比例しますので、モータそのものの振動や発熱、あるいはモータを利用して製作している製品にムラを発生させ、製品としての価値を低下させたり、製品そのものとしての基準を満たさなくなります。また、時計やオートメーション機器では、つながれている電気の周波数を基準に動いているものがあり、周波数が変動すると、時計では進みや遅れ、オートメーション機器では製品ムラが発生したりします。
 一方、回転して発電する側では、周波数が変わるということは回転数が変わるということですから、大幅な変化ではやはり振動や機械系の疲労が問題になります。このため、特に周波数が大幅に変化しますと、運転を続けることができなくなり、次々に発電機が停止して大きな停電になることもあります。

図2 周波数は発電と負荷のバランスで決まります

5.直流送電はできないのでしょうか
 「2.交流と直流、なぜ交流が広く使われているのでしょうか」の最後の方で述べましたような直流のメリットを活かせるところであれば、直流送電が使われています。たとえば、日本では、図3に示しますように、本州と北海道を結ぶ北本連系線や、四国と紀伊半島を結ぶ紀伊水道直流連系があります。直流の送電線がなくても電気的につながっているところが、周波数変換所であり、佐久間、新信濃、東清水の3か所があります。周波数は変換しませんが、直流送電線がなくて二つの交流系統をつないでいるのが南福光連系所です。これは中部地方と北陸地方を電気的に結んでいます。
 ところで、北本連系線では、約50km程度の海底を横断するため直流連系されました。しかし、紀伊水道直流連系と南福光連系所では、その両端の電気は電気的には交流でつながっています。これは、これらの地点で交流でつないでしまうと、複雑な電気の流れ方をすることがあって、電気を安全に流すことが難しくなるので,いったん直流にしてつないでいるものです。紀伊水道直流連系では、これに加えて海底を横断しますので、「2.交流と直流、なぜ交流が広く使われているのでしょうか」で述べましたように直流が使われています。
 もちろん、50Hz系統と60Hz系統の離れた所をを直流送電で結ぶことも技術的には可能です。しかし、両端に交直変換設備(周波数変換所の片側の設備)が必要になり、また直流の送電線も必要になりますので、それなりのコストが発生します。このため、コストとメリットを良く勘案することが重要です。

図3 日本の電力系統と直流

6.周波数変換所(FC)と直流送電の動作原理
 「3.なぜ日本では東西の周波数を統一できないのでしょうか」でも述べましたように、日本には二つの周波数で運転されている電力系統があって、これを交流でつなぐことはできません。このため、三カ所に周波数変換所があって、二つをつないでいます。
 周波数変換所では、たとえば、60Hzの交流の電気をいったん直流にして、これを50Hzの交流にしてつないでいます。直流にするには、サイリスタという半導体を多数用います。また、適切な直流電圧を得るための変圧器も必要です。この変圧器は、サイリスタを適切に動作させるためにも必要です。さらに、直流の電流をなめらかにする直流リアクトルと言うコイルや、それぞれの交流側には、電圧の変動を抑制する調相設備や、電圧をきれいにする交流フィルタが必要になります。
 直流送電では、図の直流リアクトルのところに直流の送電線が入ることになります(脚注9)
 なお、周波数変換所や直流送電では大きな電力をやり取りするため、交流系統の電圧の大きさを変動させます。このため、電圧の高い送電線とつながれている必要があります。

図4 周波数変換設備の構成
 
脚注

1 交流系統では、主にタービンで駆動される発電機によって発電され、その回転数に周波数は比例します。タービンの機械的出力よりも大きな電気出力を出すと、そのエネルギーの差は発電機(+タービン)の回転数の減少によって補われます。このため、周波数も低下します。この回転数(=周波数)の低下は、いろいろな制御も用いてタービンの機械的出力を増加することによって元の回転数へ戻されます。

2 周波数が高いと同じ出力を出す発電機の大きさを小さくできます、しかし、遠くまで電気を送ることが難しくなります。このため、ある狭い範囲にだけ供給する場合、たとえば、飛行機では400Hzが使用されています。

3 交流では送電電力と電圧をほぼ独立に制御できるのに対し、直流では電圧と送電電力が不可分であることから、直流では極めて高速の中央型の制御が必要になります。また、電気がショートした時には、その部分を短時間で切り離して全体への影響を及ぼさないようにする必要があります。このショート部分を切り離すのに使うスイッチが、直流では難しくなります。これは、直流では電流がずっと流れ続けていますので、スイッチで切り離そうとしても電流が流れ続けようとするので切り離すのが困難になるからです。交流では、電流がゼロになる時間がありますので、これがやさしくなります。このため、電気自動車ぐらいの大きさの電気では直流でも切り離すことができますが、もう少し大きな電気を使うところでは交流のスイッチに比べて特別な装置が必要になり、コストも高くなります。このような事情から、現在の直流送電においては世界的にも、3端子(電気を送る個所と受ける個所の合計が3か所)までの系統しか運用されていません。

4 海底横断の場合、ケーブルを使用することになります。その場合、交流の長距離では電圧の制御が困難になり、大容量の電圧制御装置が必要になります。

5「4.周波数の変動は何に影響するでしょうか」で述べますように、まず、インバータ駆動でない回転機はほとんどの場合取り替える必要があります。これには、大きな発電所のすべての発電機やタービンや工場のモータも含まれます。また、変圧器や電圧を調整する機器についても取り換えが必要になるものが多数あります。

6 厳密に言いますと発電と負荷は(途中の損失なども含めると)電気的には常にバランスしています。アンバランスは、発電機を回すための蒸気や水の量と、発電している電力の大きさとの間で発生します。つまり、発電させるための蒸気などの力(単位時間当たりのエネルギー)が発電している大きさよりも大きければ周波数は高くなります。

7 主に、火力発電の蒸気の量や水力発電の水の量を調節してタービン出力を調整します。太陽光発電や風力発電では調整できません(出力を減らすことはできますが、増やすことはできません。減らすこともよほどの場合にしかなされません)。

8 インバータエアコン、インバータ冷蔵庫、インバータ蛍光灯などがあります。インバータとは、前の二つでは、電子回路を用いて交流の電気の周波数や電圧をモータの望ましい運転状態(目いっぱい働かせるときには周波数を高く、ゆっくりで良いときには周波数を低く)に変える装置のことを言います。インバータ蛍光灯では、周波数を高くして、効率を良くし、また軽くもなっています。

9 直流の送電線が十分長ければ、送電線がリアクトルの性質をもつので、直流リアクトルは省略されることがあります。
©2002, 2007 The Institute of Electrical Engineers of Japan