3. 地域供給系統モデル


3.2 系統 II 77kV 地中送電系統


 本モデルは、ケーブル系統を主体とする都市部においての事故復旧操作の検討を行う際のモデル系統として開発した。特徴としては、復旧手段として系統切換えの他に配電切換えによる負荷移行を可能としている。


3.2.1 系統モデルの概要

 本系統は、オフィス街、商業地域を中心とした都市の中枢部であり、主として地中ケーブルで構成されている供給地域である。上位系統から受電している電源変電所が隣接しており、配電用変電所はこれらの電源変電所から受電している。

 本系統には 6 カ所の電源変電所、2 箇所の連系変電所、1 箇所の開閉所および 27 箇所の配電用変電所が存在する。系統構成は放射状で運用されており、常時開放点で系統を区分している。したがって、電源変電所の事故による全停範囲を限定することができ、復旧時には隣接系統からの供給が可能である。


3.2.2 系統データ

 地中送電系統の構成を 表 3.2 に示し、系統モデルを 図 3.6 に示す。すべての系統データを系統図上に表示している。データ項目の詳細は次の通りである。

表 3.2 地中送電系統の構成

電源変電所数 / 設備総容量 6 箇所 / 3,200 MVA
連系変電所数 2 箇所
開閉所数 1 箇所
配電用変電所 27 箇所
特高需要家数 15 箇所
送電線数 48 ルート
需要側設備総容量 / 需要総量 1,900 MW / 1,370 MW

 (1) 電源変電所

 (a) 連続容量 (MVA) : 送電用変圧器の連続容量を記述している。この値の総計が変電所容量である。

 (b) 特高需要家負荷 (MW) : 送電用変電所から直接供給している負荷に対してはノード番号と負荷の値を記述している。

 (c) 二次側母線構成 : 各変電所は 2 母線または 3 母線で構成されており、母線連絡開閉設備の投入または開放表示によって母線構成を示している。投入中の設備は○で表示し、開放中の設備は×で表示している。

 (2) 配電用変電所

 (a) 負荷 (MW) : 初期状態での負荷の値を示している。

 (b) 連続容量 (MW) : 変電所の最大容量を示している。

 (c) 負荷切換え先 : 配電切替が可能な配電用変電所は、負荷の移行先を矢印で示している。どちらか一方の変電所が停電したときは、他方の変電所へ負荷を切り換えることができる。

 (d) 位相差 : 変電所 1 の変圧器二次側母線に対する各電源変電所二次側母線の位相差。

 (3) 送電線

 (a) 連続容量 (MW) : 連続許容値としての 1 回線あたりの送電容量を示している。

 (b) 短時間容量 (MW) : 10 分以内の短時間許容値としての 1 回線あたりの送電容量を示している。

 (c) インピーダンス (%) : 各送電線 1 回線あたりのインピーダンスを 10 MVA ベースで記述している。平行 2 回線または平行 3 回線の送電線の場合は、インピーダンスは同じ値であるため代表 1 回線の値のみを記述している。

 (d) 開閉設備 : 送電線の開閉設備で投入中のものは図では省略しており、開放中の開閉設備のみ×印にて表示している。

 (4) 復旧優先度

 各負荷を 2 ランクに分類し、復旧優先度の高い負荷を I、復旧優先度の低い負荷を II と表示している。


3.2.3 事故復旧時の制約事項

 (1) 事故復旧手順

 事故復旧の検討においては、電源変電所の全停事故に対して、系統切換えおよび配電切替えによって過負荷を解消しつつ停電箇所を復旧することを想定している。

 復旧手順としては、まず 77kV 系の系統切換えを行い、系統切換えのみでは線路の過負荷が解消できない場合や停電箇所を復旧できない場合には、配電切換えによる負荷移行を行う。

 (2) 系統操作条件

 本系統では系統各部の電圧はほぼ一定であり、直流法潮流計算が使用できる。電圧などの制約がないため、77kV 系の系統切換え時における開閉設備の入切操作は任意に行うことができる。ただし、最終系統は各電源変電所ごとに系統を構成し、電源変電所同士は連系しないこととする。

 送電線と電源変圧器の短時間過負荷容量とその使用可能時間については 3.1.3 節 と同じ考え方とする。送電線の事前潮流は n-1 事故時に短時間容量を超えない値とする。

 配電切換え時の負荷の移行先はあらかじめ決められており、一つの切換え先に対して最大 30 MW まで切換え可能とする。ただし、各配電用変電所ごとの連続容量の最大値を超えない範囲とする。

 以下に、復旧手順の概略を示す。

 (a) 手順

(i) 77kV 系の系統切換えを行う。
(ii) 系統切換えのみでは線路の過負荷が発生する場合には配電切換えを行う。

 (b) 条件

(i) 配電切換えは各切換え可能先に負荷を移行する。一つの切換え先に対して最大 30 MW まで切換え可能とする。
(ii) 各配電用変電所ごとの連続容量の最大値を超えない範囲とする。
(iii) 配電切換えは停電区間から健全区間へ負荷を移行するものとする。健全区間の負荷を移行することは行わない。
(iv) 最終系統は、各電源変電所ごとの系統を構成することとし、電源変電所同士は連系しない。


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