本モデルの猛暑期 15 時の負荷断面を表した系統図を 図 3.7 として示す。系統の規模は 表 3.3 のとおりである。
電源変電所数 / 設備総容量 | 4 箇所 / 2,700 MVA |
66kV 連系変電所数 | 8 箇所 |
配電用変電所数 (連系変電所を含む) | 38 箇所 |
特高需要家総数 | 95 箇所 |
送電線ルート数 | 37 ルート |
需要側設備総容量 / 需要総量 | 2,430 MVA / 1,680 MW |
モデルの模擬範囲は電源変電所の一次側母線から、配電用変電所については変圧器二次側まで、需要家設備については一次側 (66kV) 母線までとした。 系統には 4 箇所の電源変電所が存在し通常はそのうち 1 箇所の電源は母線分割されており、66kV 系統については計 5 つの系統に分割されて放射状に運用されている。また需要の内訳は、住宅負荷 50%、商業負荷 25%、工業負荷 25% である。
系統モデルのデータについては 表 3.4 および 表 3.5 の二つの形で提供している。データ項目の種類は次の七つ。
(a) | ノードデータ | [ 表 3.4 (a) ] | ||
(b) | 送電線データ | [ 表 3.4 (b) ] | ||
(c) | 開閉器データ | [ 表 3.4 (c) ] | ||
(d) | 変圧器データ | [ 表 3.4 (d) ] | ||
(e) | 調相設備データ | [ 表 3.4 (e) ] | ||
(f) | 負荷曲線データ | [ 表 3.5 (a) ] | ||
(g) | 故障率・復旧時間データ | [ 表 3.5 (b) ] |
個々のデータ項目の詳細については表中に解説を記した。
負荷については、配電用変電所は変圧器単位で設定したが、系統図上では配変単位での表示に集約されている。
本モデルでは、事故復旧系統検討に関係ないと考えられるデータを簡略化したデータ例を別途用意した。具体的には、送電線区間ごとに負荷を集約し、配電用変電所も需要家と同様に受電側までの模擬とした。また事故復旧系統検討に関係ないデータ項目も削除した。
送電線・変圧器の短時間容量とその使用可能時間は 図 3.8 のとおりである。
事故復旧時の制約条件としては、復旧操作時に潮流が設備の短時間容量を超過しないことと、復旧後の系統にて潮流が設備の連続容量を超過しないことの二つである。
信頼度、すなわち供給支障量や供給支障時間を評価検討するには、3.3.1 に示したようなノード・ブランチデータに加えて、設備の故障率データが必要となる。また、故障発生時にほかの設備に切換え可能か否かによって供給支障量が変化するので設備容量データに加え、時々刻々と変化する需要レベルのデータも必要となる。
既存の信頼度評価用系統モデルとしては IEEE Reliability Test System が著名であり、このモデルでも送電系統モデルに加えて、信頼度評価に必要な電源特性、需要モデル、故障率データが用意されている。
今回のモデルは地域供給系統の信頼度評価を目標とするため、電源特性は考慮しないが、特に最近検討が進められている信頼度を確率に評価する手法においては、負荷変動データが重要となることから、需要モデルについては全負荷一律だけでなく、負荷の種別によって使い分けられるようにきめ細かく設定した。
(1) 負荷変動データ (需要モデル)
表 3.5 (a) に示すとおり、負荷変動データは住宅負荷・商業負荷・工業負荷に分け、日負荷曲線 (平日・休日別) と月別の年負荷レベルから、1 年間 8,760 時間の負荷変動を設定できるようにしている。特に季節による日負荷曲線の変化が著しい住宅負荷については、夏季・冬季・春秋季の 3 とおりの日負荷曲線を用意した。図 3.7 の各負荷がどの種別に分類されるかはノードデータに示されている [ 表 3.4 (a) ] 。これらの負荷曲線を 図 3.9 (a) 〜 (e) に示す。月別負荷レベルは、特にピーク需要がせん鋭化している日本の需要特性を模擬するため、通常の月とは別に、7 月末に 5 日間の猛暑期 [ データファイル ( 表 3.5 ) 中では「P」で表記 ] 設定している。月別負荷レベルを 図 3.9 (f) に示す。
また、負荷種別まで考慮できないユーザのために全系の年間デュレーションデータもディジタルデータとしては用意しており、これを用いて全負荷一律に負荷変動するとして信頼度評価を行うことも可能である。
(2) 故障率・復旧時間データ
故障率データを 表 3.5 (b) に示す。故障率は、電気協同研究「変電設備保全の高度化・効率化」 (50, No.2) に示される値や電力会社の実績値を使用した。母線の故障率は電源変電所、配電用変電所などの別を問わず同一とした。なお、送電線再送電成功以外の復旧時間は現実には、故障設備が復旧できる時間ではなく、配電切換えなどの対策により故障が継続した状態でも供給支障が解消される系統を構築するために必要となる時間に相当している。
(3) 系統切換え時間
系統モデルの中で系統切換えを考慮し、上記の復旧時間よりも早く供給支障が解消されることを模擬し、信頼度評価に反映できるよう系統切換え時間を下記のように設定した。