3. 地域供給系統モデル


3.1 系統 I 77kV 架空送電線系統


 本系統モデルは、系統事故復旧を主体とした検討用に、大規模事故復旧検討にも対応できるよう、系統規模の大きなモデルとして作成した。なお、検討内容に応じて選択できる 2 とおりの負荷ケースを設定している。


3.1.1 系統モデルの概要

 本系統モデルは、電源変電所一次側母線以下 77kV 系統を対象に模擬してある。系統モデルを 図 3.1図 3.2 に示すとともに、以下に概要を述べる。

 (1) 系統について  系統は、12 の電源変電所および各電源変電所間を連系する送電線、その途中にある線路開閉設備を有する発変電所 (以下「連系変電所」と呼称)、小規模水力発電所から構成されており、各系統は、連系変電所または電源変電所で系統分離されている。なお、送電線から分岐する配電用変電所、特高需要家は集約してある。系統 I の規模を 表 3.1 に示す。

表 3.1 系統 I の規模

電源変電所数 / 設備総容量 (個別計) 12 箇所 / 6,337 MW
水力発電所, 連系変電所数 21 箇所
発電出力 39 〜99 MW
内訳 可変出力
固定出力
10 〜 70 MW
29 MW
連系送電線数 48 ルート
需要総量 標準負荷ケース
増加負荷ケース
5,041 MW
5,351 MW

 系統の地域性としては、大きく分けて系統図上部の山間部と左部および下部の需要密集地に分けられる。山間部は系統間連系が弱く水力が並列している。それに対し需要密集地は電源変電所が集中し、複数連系している。

 (2) 負荷ケースについて  本系統モデルでは、負荷設定の異なる 2 ケースを用意してある。

 (a) 標準負荷ケースを 図 3.1 に示す。
 このケースは実運用に近い負荷設定としてある。
 適用例 : 復旧時間最小化検討 など

 (b) 増加負荷ケースを 図 3.2 に示す。
 このケースは標準負荷ケースに対し、一部の負荷設定を大きくして設備余力を減らし、事故復旧後の残存供給支障が大きい負荷設定としてある。
 適用例 : 供給支障最小化検討 など


3.1.2 系統データ

 本系統モデルでは、以下のデータを系統図上に表示している。

 (1) 電源変電所

 (a) 変圧器連続容量 (MW) : 変圧器個別および合計の連続容量値を表示している。合計値は、インピーダンスのアンバランスがある箇所は、インピーダンス比を考慮した値としてある。

 (b) 変圧器事前潮流限度 (MW) : 図 3.3 および 図 3.4 の変圧器過負荷パターンから決まる常時の変圧器潮流限度値を表示している。

 (c) 変圧器インピーダンス (% / 10MVA ベース) : 変圧器個別の 10MVA ベースでのインピーダンス値を表示している。

 (d) 二次側母線構成 : 2 重母線構成となっており、各変圧器、送電線、負荷の母線接続状態を表示している。

 (e) 位相差 : 変電所 No.1 の一次側母線に対する各電源変電所一次側母線の位相差を表示している。

 (2) 連系変電所

 (a) 77kV 母線構成 : 2 重母線または単一母線構成となっており、2 重母線箇所は、各変圧器、送電線、負荷の母線接続状態を表示している。

 (3) 連系送電線

 (a) 連続容量 (MW) : 1 回線あたりの連続容量値を表示している。

 (b) 短時間容量 (MW) : 図 3.5 の送電線過負荷パターンから決まる 1 回線あたりの短時間過負荷値を表示している。

 (c) インピーダンス (% / 10MVA ベース) : 1 回線あたりの 10MVA ベースでのインピーダンス値 (X 成分のみ) を表示している。

 (4) 負荷

 (a) 復旧優先度 : 各負荷を 3 段階に区分し、復旧優先度の高い順に I、II、III として表示している。


3.1.3 制約事項

 (1) 変圧器の事前潮流値  電源変電所変圧器潮流は、変圧器並列運用時は合計潮流を事前潮流限度以内とし、単独運用時は連続容量以内とする。

 (2) 送電線の事前潮流値  連系送電線潮流は、2 回線並用運用時は合計潮流を 1 回線短時間容量以内とし、1 回線単独運用時は連続容量以内とする。

 (3) 事故時の変圧器潮流値  変圧器並列運用時に変圧器が事故停止した場合の残り変圧器潮流は、図 3.3 または 図 3.4 の過負荷パターン内とし、パターン内に入らない場合は、負荷遮断を行う。また、隣接系統から事故復旧を行う場合の隣接変電所変圧器潮流は、連続容量以内とする。

 (4) 事故時の送電線潮流値  2 回線並用運用時に 1 回線が事故停止した場合の残り回線潮流は、図 3.5 の過負荷パターン内とし、パターン内に入らない場合は、負荷遮断を行う。また、隣接系統から事故復旧を行う場合の隣接連系送電線潮流は、連続容量以内とする。


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