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当委員会関連の最近の話題

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1. 究極のリソグラフィ技術をめざして

半導体デバイスの微細化は特別なブレークスルーなしに大きく進歩してきた。技術革新のキーとなる駆動力は、常にリソグラフィの改善であった。半導体国際技術ロードマップ(ITRS)により示された要求条件を図1に示す。この数年間、純水を使う液浸リソグラフィが急速に開発され、集中的に洗練されてきた。大量生産のための商用の露光システムが、非常に高価にも係わらず、既に提供されている。

現在、ArFエキシマレーザを使った193nm液浸リソグラフィはハーフピッチ32nmの確かな有望株である。しかしながら、193nm液浸リソグラフィ以降の候補は明らかになっていない。いくつか候補はある。その一つは極端紫外(EUV)光を用いた反射投影リソグラフィである。数年前から2005年までは、EUVリソグラフィはハーフピッチ32nm用の次世代リソグラフィの候補から外されていた。実際は、中間集光点で50W以上の高出力を持つEUV光源が開発中で、完成間近である。NA 0.25の小型露光機やフルサイズのα実証機は、既に供給可能である。加えて、マスク欠陥は急速に削減しており、高感度の低分子レジストが開発されて、小さなラインエッジ・ラフネスの微細パターンが転写されている。しかしながら、露光光源、マスク、レキスト、そして光学系の全てが、まだ実用上は技術的に十分ではない。

一方、いくつかの革新的技術を有するArF液浸リソグラフィは、今やハーフピッチ32nmから22nmへの最も期待される候補の一つと考えられている。ダブル・パターニングあるいはダブル露光がパターンを二つのグループに分割することにより、密なパターンの転写を可能にする。高屈折率液体を使った液浸リソグラフィはNAを1.5〜1.6に向上させる。この概念を実現するために高屈折率レジストやレンズ材料の開発が同時に求められている。

電子ビームを使ったマスクなしのリソグラフィ(ML2)も、低いスループットの改善は非常に困難であるが、その高い解像性能により、依然として代替候補の地位を保っている。上に挙げたあらゆる候補を適用してもロードマップで要求されるハーフピッチ22nm以下のパターンを転写することは極めて難しいだろう。しかしながら、微細化の目標達成のためには、過去に越えてきたように、克服すべきいろいろな問題を乗り越えていかなければならない。

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図1. 微細化の技術的要求条件と可能な解決技術

2. 新しい照明光源の現状

2007年3月に光源に関する世界的に最も権威あるシンポジウムである第11回光源に関する科学技術国際会議が上海で開催された。このシンポジウムでは水銀フリー蛍光ランプ、分子放射、メタルハライド・ランプ、そして半導体光源がトピックスであった。特に一日で行われた口頭発表の全ては半導体照明に当てられた。また、第1回白色LEDと半導体照明に関する国際会議が2007年11月に日本で開催される。これらの事実は、光源研究者や照明関係企業が半導体光源に強い関心を持っていることを示している。

光源分野における水銀フリー光源の研究は、この10年間高効率光源の開発と並ぶ最も重要なトピックスである。日本では蛍光ランプが最も普及している照明用ランプなので、蛍光ランプが水銀フリーで、水銀の移動がないことが主なテーマだった。蛍光ランプの寿命と効率を改善することも重要である。金沢大学の三須等はMgOあるいはダイヤモンド薄膜でコートした電極について報告した。彼らは電子放出率を改善し、放電開始と動作電圧を低減した。堀田等のグループはOH、NOそしてCOなどのUV放射分子について報告し、蛍光体励起源あるいは殺菌用のUV光源として有用であると結論した。愛媛大学の神野等のグループはパルスXe蛍光ランプ中でほとんど半分のエネルギーが浮遊容量を通して失われるが、補助的な外部電極を使うと効率が60%改善すると報告した。

光源の新しい材料としてナノクリスタル・シリコン粒子やシリコン・ナノ粒子が東京電機大学の平栗等のグループから報告されている。ナノスケールのシリコンは粒子サイズを制御することにより、あらゆる色の発光を放射できる。この技術は新しい照明デバイスへの扉を開くと予想される。

3. テラヘルツ放射光源の開発

遠赤外あるいは0.1〜10THzの電磁波がいろいろな研究や応用分野で注目されている。しかしながら、この周波数領域の放射源は極めて少ない。ジャイロトロンは高出力放射源の一つの候補である。これまでは、主にマイクロ波あるいは低周波数で開発・応用されてきた。福井大学(FU)の出原等は1THz以上の高周波数のいろいろな種類のジャイロトロンを研究してきている。

Gyrotron FUシリーズは17Tの電磁石と第二高調波動作を使って0.89THzまでの高周波数動作を達成した。最近、21Tパルス電磁石付きのFIR FUジャイロトロンが1THzのブレークスルーを達成した。ジャイロトロンには着脱可能なジャイロトロン管が21Tパルス電磁石の中心軸上に設置されている。動作テストでは最大磁場強度Bの所に置かれた電子銃に高電圧パルスが印加される。Bが変化すると、電子サイクロトロン周波数の基本波と第二高調波において、たくさんの共振モードが励起される。第二高調波の放射は高域透過フィルターを用いて基本波から分離される。観測された周波数は395GHz から1005GHzである。最大周波数はTE6,11モードの第二高調波動作により達成される。対応する磁場強度Bは19.1Tである。現在、Bを増やして周波数の向上を試みている。

応用への便宜を考えて、CWのジャイロトロン(Gyrotron FU CWシリーズ)を開発中である。Gyrotron FU CW Iが開発され、1.8kWの高出力下で300GHzでのCW動作に成功した。次の二番目のジャイロトロン、8Tの液体Heフリー超伝導電磁石を持つGyrotron FU CW IIが構築され、動作テストに成功した。これはDynamic Nuclear Polarization(DNP)を使って600MHzのプロトンNMRの感度を増強するために使われるだろう。設計されたジャイロトロンの動作モードは第二高調波で、TE2,6である。対応する周波数は394.6GHzである。共振器の直径の製作誤差のため、実際のTE06モードでの周波数は394.3GHzである。動作はTE06共振器モードで、30Wあるいはそれ以上の出力では不完全なCWである。基本波と第二高調波の典型的な出力はそれぞれ100Wと200W以上である。三番目のジャイロトロン、20Tの超伝導電磁石付きGyrotron FU CW IIIが既に設計済みで、構築がほとんど完了した。間もなく動作テストが始まる。

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