本委員会について
名称:精密サーボシステムのための次世代技術に関する調査専門委員会
調査期間:2023年9月〜2023年8月(2年間)
委員長:藪井 将太(東京都市大学)
目的
ナノメートルの精度で超高速かつ超高精度に位置決めを行なう「ナノスケールサーボ」は,ハードディスク装置や光ディスク装置,レーザ加工機(ガルバノスキャナ),半導体および液晶基板の製造装置(ステージ),原子間力顕微鏡(AFM)などの超高速・精密性を要求される製品のコア技術であり,日本の製造業を支える基盤技術である。グローバル展開する産業・情報機器の製品競争力向上および差別化を図るためには,産業界および消費者が求める技術要求を受け,制御工学に立脚した高度なサーボ技術を創出し,実製品へと実装することが重要である。特に,これまでの調査研究活動を通して様々な製品群に水平展開して得られたサーボ技術の知見は,各製品開発現場のノウハウと有機的に結合することで,新たなサーボ技術の創出や設計論の体系化につながると考えられる。
一方で,精密サーボシステムを構成するアクチュエータ,機構,センサ,情報処理など周辺要素技術の特性や構成を含めた統合的なサーボ系設計法を整理することも必要である。すなわち,精密サーボシステムの更なる高性能化に向け,サーボ技術と共に,アクチュエータとその駆動回路の厳密なモデル化手法とそれを考慮した制御方法,高精度で信頼性の高い状態量の獲得方法と信号処理技術,複数のセンサを用いたセンサフュージョン設計法,複数駆動系の特性を考慮した協調動作,機構系に内在する非線形特性の精密モデリングと制御系設計,より複雑で複合領域にまたがるシステムの精密なモデリングや相互作用の評価を行うCAE技術の利活用,などについて更に議論を深めながら,精密サーボ技術の深化と新たな展開を図ることが必要であると考えられる。
本調査専門委員会では,精密サーボシステムを核とした共通基盤技術についての調査を中心に継続すると同時に,サーボ技術を核とした様々な製品・技術分野を専門とする研究者・技術者を集め,当該技術・研究分野の更なる発展に寄与することを目的とする。
調査検討事項
(1) 各種製品における高速・高精度位置決め制御技術,速度制御や力制御技術における最新の制御技術および課題を整理しつつ,高速・高精度制御を実現するための共通基盤技術について調査する。
(2) 精密サーボシステムを構成するアクチュエータ,駆動回路,センサ,案内/伝達機構の各要素の特性が制御性能に及ぼす影響を調査するとともに,それらのモデリング方法や統合的な制御系設計手法について調査検討する。
(3) 複数のセンサやアクチュエータを活用した精密サーボシステムを実現するための新たな制御手法や実装方法について調査検討する。
(4) 他委員会との交流も視野に入れながら,様々な技術分野への精密サーボシステムによる高付加価値化に関する技術活用可能性について調査検討する。
予想される効果
本委員会では,これまでに培ってきた精密サーボ技術を核として,位置決め制御,速度制御,力制御などの高速・高精度化に向けて共通課題を調査し,その解決方法を整理・体系化するだけでなく,最新の応用事例を広く学界および産業界で共有する。知の共有により,多種多様な製品群における高速高精度システムの実現のみならず,精密サーボシステムを実現する新たな制御系設計手法や技術革新,活用方法の創出が期待される。また,このような精密サーボシステムに特化した共通の議論の場を提供することで,技術の発展と共に人材育成にもつながり,学術的にも産業界でも実りの多い活動になることが予想される。
2段アクチュエータ方式のHDDベンチマークモデル
2段アクチュエータ方式のHDDベンチマークモデルを公開しました.精密位置決め制御の検証用としてぜひご利用いただければと思います. 2段アクチュエータ方式のHDDベンチマークモデルにシーク制御を追加したものを近日公開予定です.