マイクロ波プラズマ調査専門委員会
設置趣意書
プラズマ技術委員会
1.目的
 放電プラズマは種々の工業分野で広く利用されるようになり、産業界における
一つの基盤技術として定着している。しかし、このプラズマ技術は十分な学問的
裏付けなしに経験的に開発されてきた例が多く、様々な困難に直面している。こ
の現状を打破してより高度な技術を開発するには、系統的な情報収集と、それら
の学術的分析が必須である。一方、新しいプラズマ源の出現は新しい応用を発掘
し、新たな発展の芽となることから、プラズマ発生法の模索・改良は極めて重要
である。そのような観点から最近注目される動きとして、日本で生まれて日本が
世界をリードしている新しい型のマイクロ波プラズマ生成の研究がある。マイク
ロ波プラズマは放電圧力、プラズマ密度、放電周波数などの動作範囲が広いので、
将来にわたって広範な新しい応用を生み出すものと期待されている。
 本調査委員会はマイクロ波プラズマに関して、その生成・維持の基礎的物理機
構をはじめ、発生・制御技術や各種応用技術の動向等について集中的に調査し、
次の飛躍のためのベースを築くことを目的とする。

2.内外のすう勢
 無磁場におけるマイクロ波帯 ( >300MHz ) の 放電は、長年カナダのグループ
を中心として、細長い円柱状の表面波プラズマ生成に関する物理研究が行われて
きた。しかし近年になって、大口径の表面波プラズマも生成可能であることが日
本で発表されて以来、半導体プロセスへの応用の道が開け、ヨーロッパでも多く
の研究がなされるようになった。現在、低圧力放電についてはマイクロ波パワー
の吸収機構やアンテナ設計などの重要な課題について研究が進められている。高
圧力の大電力マイクロ波放電については、伝統的にロシアにおいて研究が盛んに
行われている。
 一方、磁場中のマイクロ波プラズマに関しては、電子サイクロトロン共鳴を利
用する方式を半導体プロセスに応用する試みが日本で始まり、世界中に波及した。
さらに最近は、放電周波数を下げて大口径化をはかる研究が行われている。この
ように、国内外の産業界では、無磁場および有磁場の高密度マイクロ波プラズマ
を用いた材料プロセス、光源、有害ガス処理などの応用技術の開発研究に熱い期
待が寄せられている。一方、核融合研究の分野では、80 - 170 GHz の超高周波
帯大電力発振管の開発が進められ、国際的に大規模な高密度プラズマの生成・加
熱の研究が行われている。

3.調査検討事項
   1)無磁場および有磁場におけるマイクロ波パワーの吸収機構
     (圧力依存性,放電周波数依存性,アンテナ依存性など)
   2)プラズマの大口径化,均一化,低電子温度化などの技術とその物理
   3)エッチング,アッシング,クリーニングへの応用
   4)機能性薄膜のCVDおよび 表面改質への応用
   5)光源,イオン源,有害ガス処理への応用
   6)マイクロ波電源の小型化・高電力化・超高周波化の動向
   7)マイクロ波の人体への影響と安全対策

4.予想される効果
 これまで独立に活動してきた個々の研究者及び技術者が本調査委員会で定期的に
会合し,協力して情報を収集し調査検討を行うことにより,内外の研究開発動向を
総合的・系統的に把握することができ,技術的課題及び物理化学的問題点を洗いだ
し,将来に向けた研究開発の指針と新しい応用の展望が開けてくると期待される。

5.調査期間
  平成12年(2000年)10月〜平成14年(2002年)9月
   
6.委員会の構成
         氏 名      (所   属)
委員長 会員     菅井秀郎 (名古屋大学)
委 員 非会員 出射 浩 (核融合科学研究所)
委 員 会員 井上昭浩 (福井工業高等専門学校)
委 員 会員     大森達夫 (三菱電機(株))
委 員 会員 岡本幸雄 (東洋大学)
委 員 会員     桂井 誠 (東京大学)
委 員 非会員 加納正明 ((株)東芝)
委 員 会員 小越澄雄 (東京理科大学)
委 員 会員 作道訓之 (金沢工業大学)
委 員 入会申込中 白井 肇 (埼玉大学)
委 員 会員 進藤春雄 (東海大学)
委 員 会員 八田章光 (高知工科大学)
委 員 会員     藤田寛治 (佐賀大学)
委 員 会員 藤山 寛 (長崎大学)
委 員 会員 三宅正司 (大阪大学)
委 員 非会員 八坂保能 (京都大学)     
委 員 会員 辻本和典 (日立製作所)
幹 事 会員     神藤正士 (静岡大学)
幹 事 会員     永津雅章 (名古屋大学)
幹事補佐 入会申込中 吉田善一 (東洋大学)

7.活動予定
     委員会  5回/年
     幹事会  2回/年

8.調査結果
 本委員会での調査によって得られた結果は,電気学会技術報告書として
まとめる予定である。




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