プラズマイオン高度利用プロセス調査専門委員会設置趣意書


プラズマ技術委員会

1.目的

従来のイオン注入表面改質技術では一次元のイオンビームが利用されており,これを三次元形状物の表面加工および改質に適用するためには形状物に合わせた回転機構が必要である。これに対し,プラズマイオン注入法は三次元形状物へ均一にイオンを注入でき,回転機構が不要になるため,装置コストの低減とプロセスの容易性から産業応用への展開が大きく期待されている。更に,プラズマイオンをより高度に利用する技術として,成膜とイオン注入,あるいは,異なる素材の成膜をひとつの装置内で行うような複合加工への期待が集まりつつある。従って,表面改質技術の観点からは,従来のイオン注入及び成膜技術と,プラズマイオン高度利用プロセスとの特質の違いを比較,検討することは非常に重要である。一方,プラズマの高密度化・空間均一化に関する最近の発展は目覚しい。そのようなプラズマパラメータは表面改質プロセスの特質を左右する要因であり,従って,学究的な観点からは,新しいプラズマ源の高度利用プロセスへの適用についても検討する意義がある。
本調査専門委員会はプラズマとイオンとを用いた注入,成膜,および複合加工技術についてプラズマイオン注入技術と従来の技術および特質の違いを明らかにし、将来への展開を図ることを目的とする。

2.内外のすう勢

プラズマイオン注入技術は1985年来10年以上にわたって、イオン注入を主眼として研究、開発されてきており、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを中心として三次元基材への適用の観点から盛んに研究されるようになった。特に、最近では、複合加工技術に大きな関心が集まり始めている。成膜とイオン注入、異なる膜の積層およびイオン注入などが行われている。また,イオン挙動の解析,シミュレーションを駆使して三次元基材への適用の可否についても議論されている。研究の対象はエンジニアリング部材が対象とされ、自動車用部品(ピストンやシムなど)、タービンブレード、刃物、歯車、工具、金型などが対象となっている。また環境問題に配慮して湿式めっきに代わるコーティングにおいてもプラズマイオン注入が着目されるようになった。
プラズマ源については高密度化が推進され、新しいプラズマ源(表面波、ヘリコン波プラズマなど)やアンテナ形状の工夫による空間均一性についても多くの研究が行われ、エンジニアリング部材の表面改質に対してもこれらの新しいプラズマ源の応用が検討課題として見られるようになってきた。

3.調査検討事項

1) 高密度空間一様プラズマ源の開発動向
2) プラズマイオン注入装置(モデュレータ、複合プロセス)
3) 各種プロセスの特質(特徴、新しいプラズマ源の適用)
4) 測定技術(プラズマパラメータ、温度、到達イオン量のその場観測)
5) プラズマパラメータとイオン運動の物理(磁場、電場の影響)
6) モデリングとシミュレーション
7) 適用できる応用分野と最適手法(各種部材、半導体、コスト、展開の見通し)

4.予想される効果

ここまで散発的に活動していた研究者及び技術者が本調査委員会で定期的に会合して総合的な調査研究を行うことにより、技術的・学術的課題の把握、システム構成の最適化、将来への課題と問題点、展望が明確になると共に斬新な応用面が明らかになることが期待される。

5.調査期間

平成13年(2001年)10月〜平成16年(2004年)9月

6.委員会の構成  

委員長 行村 建 (同志社大学) 会員
委 員 池畑 隆 (茨城大学)   会員
委 員 熊谷正夫 (神奈川産総研) 入会申請中
委 員 桂井 誠 (東京大学) 会員
委 員 木幡 護 (東芝タンガロイ) 入会申請中
委 員  作道訓之 (金沢工業大学) 会員
委 員 進藤春雄 (東海大学) 7306081
委 員  高木浩一 (岩手大学) 会員
委 員 滝川浩史 (豊橋技術科学大学) 会員
委 員 田中 武 (広島工業大学) 会員
委 員 田中武雄 (大阪産業大学)
委 員 中村圭二 (中部大学) 会員
委 員     安達直祐 (安達新産業)
委 員 浜口智志 (京都大学)
委 員 堀野裕治 (産総研) 会員
委 員 諸貫正樹 (リケン) 会員
委 員     八束充保 (姫路工業大学) 会員
幹 事 政宗貞男 (京都工芸繊維大学) 会員
    幹 事     節原裕一 (京都大学) 入会申請中
幹事補 木内正人 (産総研) 入会申請中

7.活動予定

委員会 5回/年
幹事会 2回/年

8.調査結果

 本委員会での調査によって得られた結果は、電気学会技術報告書としてまとめる予定である。



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