1. 基幹系統モデル作成の目的と概要

 ここでいう基幹系統モデルとは,我が国の50Hz系統あるいは60Hz系統全体の系統特性や一般に使用されている制御系などが考慮でき,新しい電力系統解析ツールや系統制御技術などを客観的に評価することを目的にした標準系統モデルである。

 このため,使用した機器モデルや定数も潮流計算および安定度計算に必要なものに限定している。

 基幹系統モデルの作成に当たっては,アンケート調査を実施し要望事項を反映するとともに,機器モデルや定数については電力会社をはじめ,大学,メーカなど国内で広く使用されている(財)電力中央研究所(以下,電中研と略す)の「電力系統動特性解析プログラム(Y法)」(後述)の標準定数を基本的に使用している。ただし,検討の過程においてY法以外の解析ツールでも支障なく解析できることを確認している。

 また,我が国の電力系統は50Hz系統と60Hz系統に分かれており,系統構成上からも50Hz系統は関東平野のループ系統構成,60Hz系統は東西に長くのびた串形系統構成が特徴的であり,系統の特性も異なっているため,基幹系統モデルもそれぞれ別々に作成した。さらに系統規模についても基本的な多機系統を模擬する中規模の10機系統と大規模の30機系統を作成し,基幹系統モデルは4種類となっている。

 なお,上記の基幹系統モデルとは別に,新しい電力系統解析ツールや系統制御技術などの第一段階の評価および学生や初学者のために「1機無限大母線系統モデル」も作成し,付録に添付している。