4.5 電気学会 WEST30 機系統モデル

 10機系統モデル(WESTモデル)は,60Hz系統の特徴である長周期動揺が実現できるように,典型的な串形系統構成になっている。本節で述べる30機系統では長周期動揺の実現だけでなく,系統構成もより実系統に近づけるために,昼間断面の実系統データを元に縮約により作成している。その結果,60Hz系統内に存在する部分的なループ構成も表現している。また夜間断面については,系統構成は昼間断面と同一とし,実系統における系統容量の昼夜間比率を考慮して発電機の定格容量と定格出力を設定している。

 上記の他,本系統モデルの作成に当たって留意した点は以下の通りである。

(1) 系統構成だけでなく,各機器モデルおよびその定数も昼間・夜間断面とも同一とする。

(2) 送電線定数は縮約結果をそのまま使用せず,リアクタンス値のみを生かし,抵抗分およびアドミタンス分(充電容量分)については,標準として用いたTACSR810mm2・4導体の比率で置き換える。

(3) 負荷力率についても縮約結果をそのまま使用せず,昼間・夜間断面毎に全負荷一定とし,各ノード電圧は調相設備の設置で調整する。

(4) 一潮流断面で,事故点により安定,不安定が分かれるような潮流条件とする。

 

4.5.1 本系統モデルの概要

 作成した系統モデルの概要を 表4.10 に,発電機本体定数表および本体定数以外の発電機関連データを各々 表4.11 および 表4.12 に示す。

 また,系統図,インピーダンスマップおよび潮流図を,各々 図4.22図4.23 および 図4.24(peak)(night)に示す。

4.5.2 Y法によるシミュレーション結果

 最初に励磁系モデルをLAT=1,負荷特性をNLT=2の定電流特性とした場合の,系統図上のA〜D点における1回線3相地絡事故およびE,F点における2回線3相地絡事故(全て事故継続時間は70ms)の結果の一覧表を 表4.13 に示す。

 また,表4.13中に●印で示した3ケースのY法波形を 図4.25〜図4.27 に示す。

 これらの結果より,昼間・夜間断面とも事故点により安定・不安定が分かれ,さらに昼間断面では不安定なケースにおいて,3波脱調から振動発散までの多様な事故様相が実現できており,所期の目標が達成できていることが分かる。

 次に,参考として,表4.13 中に▲印で示したケースについて,負荷特性を変更した場合の発電機内部位相角動揺の比較結果を 図4.28 に示す。

 図4.28 より,10機系統モデルの場合と同様に,NLT=2と NLT=107(どちらも定電流特性)では殆ど差が認められないが,定インピーダンス特性の場合には不安定な結果となっている。

 以上のように,使用するモデルにより系統の安定度はかなり異なるが,10機系統モデルのところでも述べたように現実の負荷特性を考慮して定電流特性を基本としている。

 

【参考文献】 

(1) 浅田,他:「系統故障自動監視記録による負荷の電圧特性分析」,電中研報告,T88533 (1989-5)