4.3 電気学会 WEST10機 系統モデル

 我が国の60Hz系統は,各電力会社の系統を500kV送電線で連系し,東西に1,000kmを超える広域連系を実施している。このため,系統構成としては,東西に長くのびた,いわゆる「串形系統」となっている。

 本節で述べる「WEST10機系統モデル」は,上記のような我が国の60Hz系統を発電機10機の串形系統で模擬し,串形系統の特徴である長周期動揺が現れるようにした系統モデルである。

 本系統モデルの作成に当たっては,下記の点に留意している。

(1) 長周期動揺の周期をほぼ実系統に合わせる。

(2) 系統容量もほぼ実系統に合わせる。

(3) 連系線の長さもほぼ実系統に合わせる。

(4) 系統構成はなるべく単純な串形系統とする。

(5) 調相設備は直接的には考慮せず,昼夜間の調相設備の稼働状況の差は負荷力率で調整する。

(6) 一潮流断面で,事故点により安定,不安定が分かれるような潮流条件とする。

 

4.3.1 本系統モデルの概要

 作成した系統モデルの概要を 表4.4 に示す。

 また,系統図,インピーダンスマップおよび潮流図を,各々 図4.8図4.9 および 図4.10 (Peak), (night) に示す。

4.3.2 Y法によるシミュレーション結果

 最初に,負荷特性をNLT=2の定電流特性とした場合の,系統図上の各事故点における1回線3相地絡事故(事故継続時間70ms)および発電機G8脱落に対する結果の一覧表を 表4.5 に示す。

 また,表4.5中に●印で示した3ケースのY法波形を 図4.11〜図4.13 に示す。

 これらの結果より,昼間断面では3秒程度,夜間断面では 2.5 秒程度の長周期動揺が発生し,事故点により安定・不安定が分かれる系統モデルになっており,所期の目標が達成できていることが分かる。

 次に,参考として,表4.5中に▲印で示したケースについて,負荷特性をNLT=107の定電流特性および定インピーダンス特性とした場合の発電機内部位相角動揺の比較結果を 図4.14 に示す。

 図4.14 より,NLT=2とNLT=107(どちらも定電流特性)では結果に殆ど差が無く,両者の特性は実質的には差がないと考えられる。これは,2つの負荷特性の差が電圧が低下した場合しか現れないためと考えられる。

 一方,定インピーダンス特性の場合には,不安定になっている。

 以上のように,負荷特性によっては同じ潮流条件でも系統の安定度はかなり異なるが,現実の負荷特性がほぼ定電流特性を示すことから,今回の系統モデルではこれを基本としている。