4.2 電気学会 EAST10 機系統モデル

 わが国の50Hz系統は,500kV送電線によるループ系統が主体となっている。

本節で示す「EAST10機系統モデル」は,上記のループ系統を模擬することにより,安定度的に強固な体質を実現し,かつ,500/275kV異電圧ループ系統の付加により,実系統の特長である,2〜4秒の長周期動揺が発生するよう配慮されたモデルとなっている。

このモデルは,後に示す30機系統モデルと比較して,簡易なデータ構造にするため,作成に際しては,以下の点に留意した。

 

(1) 発電機出力や負荷電力の設定は,実際の電源や負荷の分布状況を考慮しつつ,できるだけ単純な値とした。

(2) 発電機・送電線・変圧器,その他の設備定数も,一般標準的なものに統一した。

 

また,実系統の状態を,ある程度加味するため,以下の点に配慮した。

 

(3) 500kV送電系統の短絡・地絡電流が許容値(63kA)を超過しないこと。

(4) 500kV系統の電圧は,実運用電圧を参考にして,ある程度傾斜を付けて設定する。ただし,各ノードの電圧調整にあたって,調相設備は直接には模擬せず,負荷力率の修正により行った。

 

4.2.1 本系統モデルの概要

 作成した系統モデルの概要を 表4.1,発電機関連データを 表4.2 に示す。

また,系統図,インピーダンスマップ,潮流図を各々 図4.1,図4.2図4.3 に示す。

 

4.2.2 Y法によるシミュレーション結果

 最初に励磁系モデルをLAT=1(負荷特性はNLT=2)とした場合の,送電線1回線3相地絡事故および2回線3相地絡事故(いずれも事故継続時間 70 ms)に対する結果の一覧表を,表4.3 に示す。

 また,表4.3中に●印で示した3ケースについてのY法波形を 図4.4〜図4.6 に示す。

 これらの結果より,昼間断面では2秒程度,夜間断面では3秒程度の長周期動揺が発生しており,また,不安定様相も,事故点により,1波脱調ケース,N波脱調ケースなどの模擬が可能であり,所期の目標が達成できていることが分かる。

 また,表4.3中に▲印を付けたケース(N波脱調ケース)について,励磁系モデルをLAT=2,LAT=102 にした場合の結果を 図4.7 に示す。

 これらの結果から,励磁系の速応化(LAT=2,図4.7(b)),PSSの付加(LAT=102,図4.7(c))により,過渡安定度の向上する様子が分かる。