本節では次節以下で述べる各基幹系統モデルに共通に用いた機器モデルとその定数について説明する。
発電機モデルとしては,Parkモデルのうち,一般円筒機とダンパーを有する突極機用として最も一般的に用いられているd軸とq軸に各々1個の制動回路を考慮したモデル(Y法のLGT=4)を使用している。
また10機系モデルでは,発電機の本体定数もY法の標準定数を使用している。(標準定数については,付表1.1 参照)
励磁系モデルとしては,
の3種類とし,定数もY法の標準定数を使用している。ただし,PSSの標準定数はないため,1秒周期程度のいわゆるローカル動揺から3,4秒周期のいわゆる長周期動揺まで比較的広い周波数範囲でダンピング向上効果の得られるPSS定数を検討し,使用した。(使用したブロック図と定数は 付図1.1 参照)
調速機系モデルとしては,火力・原子力機用としてY法のLPT=1,水力機用として同じくY法のLPT=3または4のモデルを使用し,定数もY法の標準定数を使用している。(使用したブロック図と定数は 付図1.2 参照)
変圧器のリアクタンス値は,EAST30機系統モデルを除いて,自己容量ベースで0.14puとしている。なお,今回は不平衡事故は対象外としたため,零相分は設定していない。
送電線は,π型の等価回路で表現しており,インピーダンスとしては,鋼心耐熱アルミ合金より線(TACSR)810mm2・4導体の500kV系統におけるインピーダンスを標準として用いている。
以下に1000MVA, 500kVベースの1回線・100km当たりのインピーダンス値を示す。
[50Hzの場合]
インピーダンス:Z = r+jX = 0.0046 + j0.1068 [pu], 充電容量:jY/2 = j0.0538 [pu]
[60Hzの場合]
インピーダンス:Z = r+jX = 0.0042 + j0.1260 [pu], 充電容量:jY/2 = j0.0610 [pu]
ただし,EAST30機系統モデルのみ縮約結果を用いているため,抵抗・リアクタンス・アドミタンスの比が異なっている。なお,送電線についても零相分は設定していない。
過去の実測を元に,有効電力は電圧が1pu付近では定電流特性,ある電圧以下になると定インピーダンス特性に切り替わるものとし,無効電力は全電圧領域で定インピーダンス特性とした(1)。この時,有効電力の特性切り替えが 付図1.5 に示すように不連続に変化する特性を標準モデルとした(Y法のNLT=2)。
ただし,参考として 付図1.6 に示すように有効電力の特性切り替えが連続に変化する特性(Y法のNLT=107)や全電圧領域で定インピーダンス特性とした場合についても一部結果を示している。