電力系統における知識工学手法の実用化技術調査専門委員会設立趣意書


電力系統技術委員会

                               
  1. 目的
     電力系統分野にはまだ確立された解法がないさまざまな問題が存在する。このような問題は極度な非線形性や組み合わせ性のため、数学的に正確に取り扱うことが困難であるという特徴を持っている。このような複雑な問題に対処するための一手法として、知識工学手法が電力分野に応用されてきて久しい。これまでに、電気学会電力技術委員会および電力系統技術委員会では、「電力系統のエキスパートシステム」、「電力系統へのニューラルネットワーク応用」、「電力へのファジー技術の応用」調査専門委員会が設立されてきており、各々、エキスパートシステム、ニューラルネットワーク、ファジーの電力分野への応用について調査を行ってきている。しかしながら、エキスパートシステムをはじめとするこれらの技術は、これまでの実績や調査結果から、単独で応用される例は希であり、通常は、従来の数理計画的手法や、他の知的手法と併せて利用され、効果的な結果を得ていることがわかってきた。最近では、モダンヒューリスティックスと呼ばれる手法との併用が注目を浴びつつあり、また、オブジェクト指向やマルチメディアタイプの新しい知識工学ツールも実用に供されつつある。それゆえ、知識工学がどのような形で電力系統分野で実用に供されているか、また、実用化にあたっての要点や過去の教訓などを電気学会の場において調査整理することは、計画・運用・制御・保護・保守に新しい展開が予想されつつある現在、時宜を得た有意義なものである。
     以上から、本委員会を設置し、大学、研究所、電力会社、メーカ等の専門家並びに関心を持つ者が集まり、本問題の調査・検討を行い、その知見を社会に公表する。

  2. 内外のすう勢
     国内では、各電力会社で、さまざまな形で多くの知識工学応用設備が実際に導入されてきており、その評価が固まりつつある。しかし、最近は、数理計画法や他のヒューリスティク手法と融合して使用されるなど、電力系統応用において新しい展開がなされてきている。一方、国外に目を転じると、IEEEではPower Engineering Society(PES)内にIntelligent Systems WGを置き、常時技術動向の調査を行っており、活動結果がIEEE PESが主催する国際会議等において講習会等の形で公表されてきている。また、Intelligent Systems Applications to  Power Systems(ISAP)国際会議が2年に一度の頻度で開催されており、毎回、世界各国から100編近い実用化や応用に関する論文が発表されている他、Power Systems Computation Conference(PSCC)等の国際会議においても多数の応用例が発表されている。

  3. 調査検討事項
    (1)電力系統で実用化されている知識工学手法の現状・動向調査
    • 知識処理技術、
    • 知識工学ツール並びに言語、
    • 電力系統で用いられているオブジェクト指向・マルチメディア型知識工学手法
    (2)最新の知識工学技法とその電力系統への適用法の調査
    • 知識工学手法と他手法(たとえば、数理計画的手法、モダン(メタ)ヒューリスティック手法など)との併用・融合技術とその電力系統への適用法
    • その他の新しい知識工学技法・ツールとその電力系統への適用法
    (3)国内外における電力系統分野での適用事例の調査
    国内電力会社へのアンケート調査や実用化に関する論文のサーベイ等による、監視
    • 制御・保護、計画・運用、予測、新しい応用などの国内外の適用事例調査
    (4)電力系統での新しい応用と今後の展望並びに課題
    • 電力系統の新しい展開に応じた知識工学応用手法適用の見通し、
    • 現時点での技法の体系化、 
    • 今後の展望と課題の整理

  4. 予想される効果
     知識工学応用手法やその融合手法に関する今後の研究・開発・実用化に向けて、現在、すでに実用化されている技術や個別に研究・検討されている技術を整理し、かつ、体系化することができる。

  5. 調査期間
    平成9年6月 〜 平成11年5月

  6. 委員会の構成
    委員長奈良 宏一(茨城大学)
    委員伊庭 健二(三菱電機)
     〃植木 芳照(富士電機)
     〃大野 博孝(中部電力)
     〃後藤 健(東北電力)
     〃小俣 和也(東芝)
     〃斉藤 浩海(東北大学)
     〃佐伯 眞(中国電力)
     〃佐々木博司(広島大学)
     〃佐藤 信利(明電舎)
     〃関田 昌弘(電源開発)
     〃鶴間 司(北海道電力)
     〃東西田憲一(関西電力)
     〃永田 武(松江高専)
     〃七原 俊也(電力中央研究所)
     〃西田 正吾(大阪大学)
     〃平山 平三郎(九州電力)
     〃福井 千尋(日立)
     〃牧野 理一(北陸電力)
     〃横山 明彦(東京大学)
    オブザーバ C.C.Liu(ワシントン大学)
     〃J.K.Park(ソウル大学)
      その他公募による委員  若干名
    幹事北 裕幸(北海道大学)
    幹事萩原 淳(東京電力)
    幹事補佐林  泰弘(茨城大学)

  7. 活動予定
     委員会  6回/年程度    幹事会  6回/年程度