96年度研究会要旨
発表番号 HEE-96-1
タイトル 博士論文に見る半導体レーザ研究の歴史-調査の概要-
発表者 高橋 信一(慶応義塾大学)
アブストラクト


 
半導体レーザは1962年に出現以来,30年以上にわたる数多くの研究成果が蓄積され,光通信を始めとして多方面に広く用いられている。またその研究から新しい学問領域も生まれてきている。そうした研究開発の足跡を振り返ってみる。
   
発表番号 HEE-96-2
タイトル 電子レンジ用連続波マグネトロンの国産化について
発表者
 
前島 正裕(国立科学博物館)・斉藤雄一(エレクトロニクス発展の歩み調査会)
アブストラクト


 
現在世界で生産されているマグネトロンは,レーダーなどに使われるパルス波マグネトロンと加熱に使われるCW(連続波)マグネトロンに分けることができる。CWマグネトロンの中でも電子レンジ用のものは,国内とその協力メーカーで約9割を生産している。
   
発表番号 HEE-96-3
タイトル マツダ証明学校と東芝科学館の創設過程
発表者 兵頭 正明(照明文化研究)
アブストラクト


 
1927年に開設されたマツダ照明学校は,照明技術の普及と教育,家庭電化による生活の向上に貢献した。又,1961年に開館した東芝科学館は,電気技術の広範囲の展示と普及により人と科学との一層のふれ合いを求めている。
   
発表番号 HEE-96-4
タイトル 千葉県立現代産業科学館と科学技術博物館の役割
発表者 高安 礼士・亀井 修(千葉県立現代産業科学館)
アブストラクト


 
産業は,科学技術の進歩とともに著しく発展し,それに伴って人々の生活も豊かになってきた。豊かさを享受する一方で,それを支える科学技術と社会との乖離といった問題が生じてきた。現代産業科学館は,現代・産業・科学に対する興味関心と理解を深めることを目的とする。
   
発表番号 HEE-96-5
タイトル 電子試験における強電関係研究所関係研究所のあゆみ
発表者 森 英夫(三菱電機)
アブストラクト


 
電子技術総合研究所は,電気試験所と称していた。戦前の電気試験所の雰囲気がどのようなものであり,どのようにして作られたのか,多くの卓越した研究者が集ったのか明らかにするため,先輩へのインタビューを行い,関係の資料を調べ,強電関係の研究開発の歩みをまとめた。
   
発表番号 HEE-96-6
タイトル ラウール・デュフィと電気の精
発表者 宮地 巌(愛知工業大学)
アブストラクト


 
セーヌ河口に近く英仏海峡に沿ってパリュエル原子力発電所がある。付近のノルマンディ海岸一帯は白亜の断崖で,印象派の画家達に愛好された景勝地が多い。その語源となったモネの「印象・日の出」はル・アーブルの風景であり,「電気の精」のデュフィもこの地の出身である。

 

 
発表番号 HEE-96-7
タイトル テレビ受信機開発の歴史
発表者 久野 古夫(松下電器産業株式会社)
アブストラクト


 
テレビの始まりから真空管式テレビ受信機が軌道に乗るまでを,身の回りのことを雑えて述べた。テレビは,これからカラーの時代に入り,トランジスターの発明で急転し,ニューメディヤと呼ばれた時を経て,今はマルチメディア時代と呼ばれている。
   
発表番号 HEE-96-8
タイトル 日本におけるテレビ普及の特質と受像機産業
発表者 平本 厚(東北大学)
アブストラクト


 
戦後の再出発の時点では10年遅れたといわれた日本のテレビ産業は,わずか7〜8年の間に国際競争力をつけるに至った。当初の技術遅れや貧しい国内市場を考える時,結果は意外であった。極めて速い産業成長であったが,その結果で原因でもあったのが普及の速さであった。
   
発表番号 HEE-96-9
タイトル 明治期におけるジーメンスと日本
発表者 竹中 亨(大阪大学)



 
明治期におけるジーメンス社の対日活動を明らかにする。同社は,欧米電気企業のうちで,日本に自社拠点を構えた唯一のメーカーで,しかも,同社は単なる対日輸出に終始していたのではなく,鉄道や鉱山などに関して,直接投融資を企画し,製造拠点の設立まで立案していた。
   
発表番号 HEE-96-10
タイトル 近代日本における電気学校・学科一覧(第1版)
発表者 高橋 雄造(東京農工大学)
アブストラクト

 
明治維新以後1940年までの間に,153の電気学校・学科が設立された。最初は,明治4年の工部大学校電信科である。これらの学校・学科を,五十音順にならべてある。
   
発表番号 HEE-96-11
タイトル 富士製作所の足跡-日本のラジオ・テレビ工業史におけるスター
発表者 高橋 雄造
アブストラクト

 
富士製作所(のちスター)は,戦後のラジオブームで成長した電子部品メーカで,春日無産工業(今日のケンウッド)とともにラジオコイルの双璧と呼ぶべき存在であった。富士製作所/スターの足跡をスケッチする。
   
発表番号 HEE-96-12
タイトル 利用のための写真資料の保存について
発表者 亀井 修(千葉県立源田雄産業科学館)
アブストラクト


 
写真は,多くの情報をコンパクトに保存できる利点を持ち,過去現在を効率よく未来に伝えることができる。しかし,毎年多くの写真が経年変化・無関心な取扱いにより失われている。ここでは写真資料の保存の意味及び利用と保存のバランスさせかたについて報告を行う。
   
発表番号 HEE-97-13
タイトル 工部省の電信技術導入体制の転換
発表者 川野辺 冨次(電信研究家)
アブストラクト


 
東 京長崎間電信線路建築工事は番狂わせが生じたが,一応明治5年に連絡した。しかし,既に開通した東京神戸間の回線は障害により全通が48%と言った状況 で,遅延承知の条件で取り扱う有様であった。政府の電信事業の存立にも影響しかねない状況下で,導入体制の転換を進めた。
   
発表番号 HEE-96-14
タイトル 電気学会における電磁鋼板に関する調査研究史
発表者 成田 賢仁(元九州大学)
アブストラクト


 
日本におけるけい素鋼板の製造・利用技術が極めて高い水準にあることは,国内外における関係者の等しく認めるところであろう。電磁鋼板に関する調査研究を調査整理し,次代の研究者に伝え,その便に供することは有意義であろう。本文では電気学会の寄与について概述する。
   
発表番号 HEE-96-15
タイトル 旧論文の内容誤認による電気技術史の不当な歪曲を正す
発表者 虫明 康人(元東北大)
アブストラクト


 
本学会誌1995年9月号中のトピックス「八木アンテナの発明たたえ東北大にIEEEマイルストーン記念碑」の記述の一部は,本学会誌1925年9月号に掲載されている八木教授の論文の内容誤認によるものと判断される。そして,電気技術史を不当に歪曲するものである。
   
発表番号 HEE-96-16
タイトル 海外電子技術史研究家たちとの交流
発表者 小泉 直彦(電子技術史研究家=GC/L&S)
アブストラクト

 
海外,特に米国でレーダの歴史の研究に深い関心を持つ方々との間で,往時の日本のこの分野における技術レベルに関して情報交換を行っている。個人ベースの日米間の共同作業の具体例のいくつかを紹介する。
   
発表番号 HEE-96-17
タイトル 日本アマチュア無線連盟と展示室
発表者 藤室 衛(社団法人 日本アマチュア無線連盟)
アブストラクト


 
我が国の短波通信の開発は公認の無免許無線局から開始され,内外の短波実験局を相手として通信実験が行われた。無線電話実験放送の受信に加えて電波の無免許発射を始めたのがきっかけとなり,私設無線電信無線電話実験局の許可が与えられる様になり,公認の連盟となった。
   
発表番号 HEE-96-18
タイトル 依佐美送信所の長波無線施設-対欧無線通信発祥の地-
発表者 田中 浩太郎(日本電話施設株式会社)
アブストラクト


 
依佐美送信所は対欧通信施設として運用された。現存する長波送信機としては,世界最大のものと考えられる。本稿では,このような巨大な無線通信施設生誕の背景とその施設や建物の概要,そして産業遺産的な価値について述べる。

 

 
発表番号 HEE-96-19
タイトル 技能五輪の訓練視点-ラジオ・テレビ修理職種-
発表者 遠藤 博久(日立製作所・横浜支社)
アブストラクト

 
先ず当社の教育理念と教育体系,それに当社における技能訓練の中心機構である日立生産技能研究所の概要を紹介し,次いで技能五輪ラジオ・テレビ修理職種の経過を報告する。
   
発表番号 HEE-96-20
タイトル 印象派・ワインと隣り合うフランスの原子力発電
発表者 宮地 巌(愛知工業大学)
アブストラクト


 
フランスの原子力発電設備は,印象派のモチーフとなった河川や断崖に近く,銘柄ワイン畑とも隣合っている。フランス人の心の中にある印象派とワインへの愛着と,違和感のない原子力発電立地との意志の融合を考え合わすことは,電気技術史としての意義があると思う。
   
発表番号 HEE-96-21
タイトル 国産モータ100年の歩み
発表者 灰谷 英夫  山田 慎一郎(東芝)
アブストラクト

 
100年にわたり電動機が製作されてきたが,昨年は第一号機が製造されてから丁度100年目であり,産業用電動機の歩みを,東芝の製作実績を中心に調査を行い,技術の進歩と社会情勢の様子を紹介する。
   
発表番号 HEE-96-22
タイトル 電気単位と標準の歴史
発表者 管野 允(元玉川大学・元々電総研)
アブストラクト


 
”測定は科学技術の杖である”と言われる。測定とは「ある量を,基準として用いる量と比較し,数値または符号を用いて表すこと」である。単位と標準はその時代の最高の理論と技術を駆使し,かつ世界的な連絡をとりながら進歩して来た。
   
発表番号 HEE-96-23
タイトル
 
精密電気計器における細密読み取りの歴史-ダイヤゴナル目盛りを中心に-
発表者 松本 栄寿(横河電機・横河総合研究所)
アブストラクト


 
電気の定量計測は,現代の生活文明の基礎を作った。しかし,その歴史は電気技術の実用化以前に発展した,天文,地測,時間などの技術を無視することはできない。この論文は電気計測定量化の始めである目盛りを読むことに着目し,欧米を中心に最近の日本までをカバーする。
   
発表番号 HEE-96-24
タイトル 第二次世界大戦前後の電気事業史をめぐる技術史・事業史上の諸課題
発表者 岡本 拓史(新潟大学)
アブストラクト

 
戦前の国家管理への移行期から戦後の再編成期にいたるまでの日本の電気事業の歴史を瞥見し,そののちに事業史・技術史上の諸課題を,現在までの研究成果や基礎的な資料を紹介しながら指摘していく。

 

 
発表番号 HEE-96-25
タイトル 電子工業振興臨時措置法の成立過程-戦後電子技術行政の部隊裏-
発表者 青木 洋(会津大学短期大学部)
アブストラクト


 
本稿が考察の対象とするのは,1950年代の中央官庁及びその周辺の動きである。日本ではこの時期に電子技術の振興が叫ばれるようになり,日本の電子技術行政の方向が固められていった。戦後の電子技術行政の舞台裏を明らかにしたい。
 
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