駅伝サポートシステムの開発

堀尾敦史 奥田仁 豊島章(日本放送協会 広島放送局・山口放送局)

 本論文は,平成9年度電気・情報関連学会中国支部連合大会で発表され,平成9年度電気学会論文発表賞Bを受賞されたものです。(電気学会中国支部事務局)

  1. はじめに

  2.  駅伝中継は,かなり広範囲の地域を移動して中継を行うため,映像,音声を放送会館まで伝送する際にはFTUと呼ばれる無線伝送設備を利用する。中継車から発射された電波はビル屋上などに置かれた地上系受信基地やヘリコプターを経由(これをヘリスター伝送という)して会館にと届けられるが,発射された電波が高架橋やトンネルなどの障害物の影響を受けることがある。
     従来の駅伝中継ではこのような障害物や中継車の位置などの情報は無線連絡に頼っており,特にヘリスター伝送中心の2号車,3号車からの電波が高架橋などによって遮られる場所を視覚的に知ることができなかった。
     そこで,障害物の位置や1号車の伝送切替地点が事前に視覚的に判断でき,障害物の手前ではアラームを出してスイッチャーやミキサーに知らせる「駅伝サポートシステム」を開発した。
  3. システムの概要

  4.  このシステムは障害物の位置,1号車の伝送切替地点をあらかじめデータとして登録し,各中継車に取り付けた距離計から送られてくる中継車の位置情報と併せてパソコンで処理した画像をモニター上に表示するものである。
     各中継車から発射された電波は,そのほとんどが地上系FPU受信基地やヘリコプターを経由し,大規模受信基地に集約される。ここから,適切な映像・音声を会館へと送る。
     距離計のデータは映像信号のブランキング期間に重畳されて会館に届けられる。会館では映像信号から元の距離計データを取り出し,このシステムに配分する。
     このシステムでは画面に3台の中継車が走行している状況をアイコンによって表示する。歩道橋や高架橋が近づいてくると中継車アイコンが赤くなり,「注意」の文字がアイコン上に表示される。また,ヘリスター伝送中心の2号車,3号車については音声(各中継車ごとに異なる)による注意喚起も行う。
     また,この中継車アイコンや障害物アイコンの下にある色つきの帯は,1号車で使用されるFPU受信基地の受信エリアを示しており,ヘリスター伝送が悪天候などで使用不可となっても,どの受信地点でバックアップすればいいかが視覚的に判断できる。
  5. 本番運用

  6.  本番では各スイッチャー,ミキサーなどの担当者に映像分配し,この情報を参考にしてスイッチングやミキシングを行った。昨年度の第2回大会に引き続きこのシステムを利用したが,精度の向上や音声の付加など,細かな部分での改良も好評を得,中継は大成功に終わった。
  7. 今後の課題

  8.  今後はモニターでの映像アラームに加え,タリー表示器などによる,より明確なアラーム表示や,より正確な情報提供ができるシステムへの改良を検討する。
  9. まとめ

  10.  本システムは非常に好評で,今後の広島男子駅伝中継において不可欠なシステムとして定着しつつある。
     事前のデータ入力機能を洗練して汎用性を高め,精度を上げることで,広島以外でも応用が可能となれば,NHKのロードレース中継の強力な武器になると思う。
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