最先端の計測技術
光計測では低繰返しパルス光と結晶の非線形光学効果による和周波光を用いた「光‐光サンプリング方式」で1ps(1THz)の光サンプリングオシロスコープの開発に成功している。 このオシロスコープは高符号速度光通信における正確な光波形を計測するのに利用される。 例えば、最近光ファイバ通信において、伝送容量を大きく向上させ、符号速度を向上させる光時間多重(OTDM : Optical Time Division Multiplexing)通信が注目を浴びている。 2005年には40Gbpsの高速の伝送速度が期待できる。 このような高速の伝送速度領域での偏波モード分散や波長分散などの影響で伝送光波形が崩れる。 伝送品質向上のためには光波形の評価が重要である。 現在の電気オシロスコープでは40Gbps以上の光波形を正確に観測することは困難であるが、この「光‐光サンプリング方式」によるオシロスコープの出現で1ps(1THz)という高い時間分解で、今までの50GHzが限度である電気オシロスコープで観測できなかった光波形やアイダイアグラムが評価できるようになった。

図1 光サンプリングの原理
Fig. 1. Principle and time chart schematics

周波数計測では1.5μm帯の光ファイバーを用いた波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)の周波数基準として、アセチレン(C2H2)分子の飽和吸収分光を用いた方法を開発し、10-10の高精度が得られた。 光源には線幅100kHz、出力10mWの外部共振器半導体レーザを用い、光共振器で安定化し、アセチ
レンの飽和吸収信号を得る。 次に共振器長を変調して誤差信号を得て、光共振器長に負帰還を行ってレーザ周波数を安定化する。 10-10の精度は波長分割多重通信には十分であるが、度量衡の光周波数標準として確立するためには10-11〜10-10の周波数精度が望まれる。 電波計測ではマイクロ波・ミリ波を用いたレーダ計測で著しい成果が得られている。 レーダ観測においては地表面からの反射によるグランドクラッタ、海面からの反射によるシークラッタ、雨雲からの反射によるウェザークラッタ、人工的な妨害であるチャフ、ジャミングの中に埋れたターゲットを検出することが重要である。 最近、時間‐周波数変換を用いたウェーブレット変換がクラッタ抑圧とターゲット検出に応用された。 X‐バンドレーダを用いて、シークラッタに埋れている2隻の船舶の生データと、ハール基底を用いたウェーブレット変換によるシークラッタの抑圧と2隻のターゲット検出を図に示す。 なお、ターゲット対クラッタ比は20.5dB得られている。図中赤で表示されているのがターゲットである。

(計測技術委員会:委員長 関根 松夫)

図2 生のデータ
Fig. 2. Raw data.

図3 ウェーブレット処理後のデータ
Fig. 3. Processing result by wavelet transform.

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