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電気学会 誘電・絶縁材料技術委員会
委員長 田中康寛

 平素から誘電・絶縁材料技術委員会の活動にご理解とご協力をたまわり、厚く御礼申し上げます。当技術委員会では、毎年、研究会、セミナーなどを企画しておりますが、中でも電気電子絶縁材料システムシンポジウムは、当該分野の研究者・技術者が一堂に会して議論する、最も重要な行事と位置づけて注力しております。
 昨年度は当シンポジウムの国際版である2014 ISEIM(7th International Symposium on Electrical Insulating Materials)を、6月1日から5日にわたって、新潟の朱鷺メッセにおいて開催しました。ISEIMは当シンポジウムを兼ねて開催されますので、昨年度のISEIMは第45回のシンポジウムにあたり、今年度が第46回目に相当します。昨年のISEIMでは、数値シミュレーションに関するワークショップや空間電荷分布計測装置のデモおよびチュートリアルなど、さまざまな新しい企画も実施され、世界16か国から160人を越える参加者をお迎えして大盛況でした。これも、開催にご尽力いただいた多くの関係者のご協力の賜物であり、ここに改めてご協力いただいた皆様に感謝の念を表したいと思います。
 さて、本シンポジウムも今回で46回を数えることとなりました。皆様もご存知のように、本シンポジウムは昭和43年(1968年)に第1回電気絶縁材料シンポジウムとして開催されました。当時は電気学会電気材料技術委員会のもとで活動していた絶縁材料関係の専門委員会である、絶縁材料耐熱性試験法常置委員会、絶縁材料コロナ劣化常置委員会、絶縁材料トリーイング調査委員会、絶縁材料導電特性研究委員会の4委員会が協力して開催されました。現在、米国にて毎年開催されている国際会議CEIDPのルーツであるポコノ会議に参加した日本のこの分野の先駆者たちが、日本でもこの分野の学術研究・技術開発の最先端の議論を行いたいという強い願いを具現化した会議でした。当時の先駆者たちの先見性とバイタリティーが実現した会議であると言えるでしょう。昭和46年(1971年)には電気学会に絶縁材料常置専門委員会が設置され、第4回シンポジウムの開催母体となり、現在に近い形が出来ました。今からちょうど20年前の平成7年(1995年)には、このシンポジウムの国際版である第1回ISEIM(兼第27回シンポジウム)が東京で開催され、平成11年(1999年)の第31回シンポジウムからは、名称が現在の電気電子絶縁材料システムシンポジウムに変更され、対象分野の更なる拡大が明確に示されました。
 このような歴史的背景のもと、当技術委員会では、誘電・絶縁材料技術分野の発展に貢献された方々に対して、先駆者の代表者でもある犬石先生、家田先生、矢作先生のお名前を冠した賞を授与し顕彰する活動を行っております。このうち犬石賞はISEIMにおいて表彰が行われ、昨年の2014 ISEIMでは、Rensselaer Polytechnic InstituteのProf. K. Nelsonが犬石賞を受賞され、“Nanodielectrics - the First Decade and Beyond”という題目で記念講演を行いました。また、学術貢献賞の家田賞、技術貢献賞の矢作賞は国内で開催されるシンポジウムで表彰が行われ、今回は新潟大学の金子先生が家田賞を、湘南工科大学の海老沼先生が矢作賞をそれぞれ受賞されることになりました。各受賞者には、シンポジウムでご講演をお願いすることになっております。これは技術開発のご苦労と成果を若い世代に伝えていただきたいという思いによるものです。ご期待ください。
 さて、当委員会では、このシンポジウムを魅力的なものにするためにこれまでも尽力してまいりました。一昨年には計測や診断のデモンストレーションを行い、昨年度のISEIMでは空間電荷計測に関するデモンストレーションを行いました。これらは、若手研究者に現場での作業を理解していただくことで、研究の重要性を再認識していただくことを目的としており、今年も診断技術に関する実演を行う予定です。これにより、セッション全体が活性化することを期待しております。
 さらに、もうおなじみになったかもしれませんが、若年層を中心とした研究者が相互に触発しあうことを目的としたMutual Visiting方式のポスターセッションに加え、企業での研究開発を特に若手研究者に知っていただくための展示発表セッション(SSセッション)も、前回同様実施いたします。今回もSSセッションに多数ご協力いただきまして、ご関係の皆様に厚く御礼を申し上げます。
 さらに今年の新しい試みですが、主に若い研究者を対象として、電線総合技術センターの山田様に「電線・ケーブルの構造及び劣化事象の紹介」という題目の特別講演をお願いしています。若手の研究者のみならず、大学などの研究者にとっても、現場の電力ケーブルがどのような構造で、劣化の現実はどのようなものであるのかを知ることのできる有意義な講演になると思います。
 また、昨年度のISEIMより、日韓交流を活性化させるために、両国内の会議で優秀発表賞を受賞した学生を、双方の会議に招待し、発表を行ってもらうという若手研究者交換プログラムをスタートさせました。今年も、まず韓国の会議で選ばれた学生を今回のシンポジウムに招待します。また、このシンポジウムで、秋ごろに行われる予定の韓国の学会に派遣する、日本側の代表者も選出します。このような交流を皮切りに、今後は、当技術委員会の活動をグローバル化させたいと考えております。
 話は変わりますが、先日JICABLEという電力ケーブルをテーマとした国際会議に参加してきました。この会議で、日本のケーブルメーカーが、架橋ポリエチレンを絶縁材料に用いた新たな電力用直流海底ケーブルの敷設を受注したとのニュースを知りました。これは欧州での直流高電圧(HVDC)送電網開発の一環として行われているプロジェクトに、日本の技術が貢献するという喜ばしいニュースであり、今後、様々な分野でこのようなプロジェクトが実現していくことを、現実として身近に感じてきた次第です。欧州はHVDCで活気づいていることは間違いありません。当シンポジウムにご参加の皆様にも、国内はもとより、海外へも目を向けていただき、日々培ってきた技術を、世界のインフラ整備に役立てていただきたいものです。このシンポジウムが、皆様にとって、そのような意識変革のきっかけとなることを期待しております。
 最後になりましたが、今回のシンポジウムの開催に多大なご協力を頂きました、九州工大の匹田先生、小迫先生を始めとする現地実行委員の方々、誘電絶縁技術委員会幹事団、1号委員、2号委員の方々に心よりお礼を申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。