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電気学会 誘電・絶縁材料技術委員会
委員長 長尾雅行

 みなさまには,平素から誘電・絶縁材料技術委員会の活動にご理解とご協力を賜り,心より厚く御礼申し上げます。ご存知のように,当技術委員会では,毎年,研究会,セミナーなどの各種の活動を企画しておりますが,中でも電気電子絶縁材料システムシンポジウムは,誘電・絶縁材料およびそのシステム分野の研究者・技術者が一堂に会して議論する,最も重要な行事であると位置づけています。
 昨年度の第42回シンポジウムは約3年毎に国際会議バージョンとして実施する第6回ISEIM(International Conference on Electrical Insulating Materials)として,2011年9月6-10日に京都市の同志社大学にて開催されました。11のトピックに128論文の応募があり,世界の15ヶ国より約140人以上の参加者を集めて盛大に実施されました。ISEIM恒例の犬石賞はマサチューセッツ工科大学のマーカス・ツァーン教授に対して授与され,「Unipolar charge transport in oil-pressboard systems with planar, coaxial cylindrical and concentric spherical electrode geometries」のタイトルで受賞講演が行われました。会議全般を通じて,世界的にもこの会議の位置付けが定着してきたことが伺えました。
 そして,今回は再び国内会議に戻り,第43回電気電子絶縁材料システムシンポジウムとして開催する運びとなりました。シンポジウムの歴史をひもとくと,第1回は電気絶縁材料シンポジウムとして,昭和43年に電気学会電気材料技術委員会のもとで活動していた絶縁材料関係の専門委員会である,絶縁材料耐熱性試験法常置委員会,絶縁材料コロナ劣化常置委員会,絶縁材料トリーイング調査委員会,絶縁材料導電特性研究委員会の4委員会が協力して開催されました。現在,米国にて毎年開催されている国際会議CEIDPのルーツであるポコノ会議のように,この分野の学術研究・技術開発の最先端の議論を日本でも行いたいとの関係各位の強い願いを具現化した会議でした。昭和46年の第4回シンポジウム以降は電気学会に絶縁材料常置専門委員会が設置されて担当することになり,現在に近い形が出来上がりました。平成11年の第31回シンポジウムより,名称を現在の電気電子絶縁材料システムシンポジウムに発展的に変更することにより対象分野の更なる拡大を明確に示しました。初期の手書き原稿を含めてこれまでに発行された予稿集をながめると,犬石先生,家田先生,矢作先生を始めとする多くの先人のご努力と輝かしい成果が偲ばれます。日本のこの分野の学術研究・技術開発を世界の最先端まで押し上げるのに大きな役割を果たしたこのすばらしいシンポジウムを継続的に維持発展させていくことの責任を技術委員長として痛感しています。
 一方,現在,各種の研究会,大会,セミナー等が数多く開催されている状況にあり,本シンポジウムの位置づけと特徴をより明確にすべく,委員会としてもこれまでにいろいろな努力を続けてきています。ISEIMにおける犬石賞,本シンポジウムにおける学術貢献賞としての家田賞,産業界への貢献に対する矢作賞の創設を始め,次世代を担う学生・若年層を中心とした研究者が研究討論を通じて相互に触発しあうとともに,口頭発表的要素をも取り入れたMutual Visiting 方式のポスターセッション(MVPセッション),産業界からの発表セッションとして通常の研究発表に加え企業での研究開発を特に若手研究者に知っていただくための展示発表セッションであるSun Shine (SS) セッションなどをこれまでに導入し成果を上げていますが,今後もこれらの斬新なアイデアによる企画を継続してさらに推進して行く予定です。
 今回のシンポジウムの家田賞は名古屋大学工学研究科長である鈴置保雄先生が受賞されることになりました。ご存知のように鈴置先生は名古屋大学にて家田研究室の後継研究室を担当されており,絶縁材料に関する研究のみならず電気エネルギーシステム全般に研究範囲を拡大されており,家田賞に真にふさわしい方であると思います。一方,矢作賞は元日立電線の遠藤桓氏が受賞されることになりました。遠藤氏も矢作賞にふさわしい方であり,ケーブルメーカに勤務される中で,特に電力ケーブルに関係する部分放電検出技術の開発において優れた成果を上げられており,高速遮断技術などを通じて電気トリーの防止技術の開発に繋がる大きな貢献をされています。今回の受賞講演において,お二人からは,これまでの研究・技術開発のご苦労と成果のみならず,そのもととなる精神や心構えを若い世代に伝えていただけるものと期待しています。
 また,本年度は,特別セッションとして「数値シミュレーション技術の新展開」を企画し,この分野の第1人者でもある三菱電機の信時氏に「絶縁性ポリマーの熱伝導性に関する理論的研究」と題して基調講演をお願いしました。シミュレーション技術の進歩を利用して仮想実検を行うことにより技術開発のスピードアップを図ることが可能になってきており,我々の分野においても今後その貢献が重要性を増している現状をご理解いただけましたら幸いです。さらに今回は,特別招待講演として元明電舎の熊田氏に「高圧回転機絶縁の変遷と課題」と題して講演をお願いしました。若手技術者や学生諸君を中心とする若い世代に向けてこれまでの高圧回転機絶縁の歴史を振り返る中で今後の技術開発の展望について大いに語って頂きたいと思っています。
 また,3年前より,本シンポジウムにおける研究発表をもとに候補を選び,それらをバージョンアップして頂き,電気学会A部門論文誌において電気電子絶縁材料システムシンポジウム特集号を毎年発行することに決定しました。これにより,本シンポジウムにおける優れた研究成果がより広く周知されるとともに,シンポジウムへの参加意欲が向上することを期待しています。
 以上のように,技術委員会としてはいろいろな努力を続けていますが,本シンポジウムを真に有意義なものに出来るか否かは,シンポジウム参加者一人一人の参加の心構えにあると思います。ご自分の研究成果を他の参加者に広く知ってもらうのみならず,一つでも多くの新しい知識やアイデアを他の参加者の発表や討論の中から得ようとする気持ちを持って参加することが大切と思います。シンポジウムのセッションだけでなく,休憩時間,食事時間,懇親会の時間などを利用して,多くの方と知り合い,交流を深め,大いに議論し情報交換していただくことを期待しています。
 最後になりましたが,今回のシンポジウムの開催に多大なご協力を頂きました,遠山先生を始めとする現地実行委員の方々,誘電絶縁技術委員会幹事団,1号委員,2号委員の方々に心よりお礼を申し上げ,私の挨拶とさせていただきます。