産業応用部門の運営方針について
電気学会産業応用部門部門長
清水敏久(首都大学東京)
Toshihisa Shimizu (Tokyo Metropolitan University)
President, Industry Applications Society, IEEJ

 このたび,産業応用部門長を仰せつかりました清水でございます。河村前部門長の公務のご都合により代役を務めさせていただきます。1年間の任期ですが,産業応用部門の継続的な発展に専心する所存です。

 ご存じのように今年は産業応用部門が発足して25周年の記念すべき年にあたります。本年のニュースレターの1月号と2月号では,歴代の3名の部門長と中堅・若手4名の諸賢から,部門の将来の発展に向けた貴重な提言を頂戴しています。第90代電気学会会長の深尾先生の記事に記されているように,産業応用部門は電気学術の将来の発展が最も期待される部門として設置されました。その後の25年間の会員各位のご尽力により,電気機器・パワーエレクトロニクス・制御などの基盤技術に加えて,各種産業・自動車・交通輸送・社会システム・モーションコントロールなどの応用技術が調和した裾野の広い部門に発展しました。一方で,世界の産業構造の変革が急 速に進展する中で,新たな展開を期待する声が諸賢のご提言からも読み取れるのではないかと思います。

 このような状況を見通して,歴代の部門長は,部門の新たな展開に向けて重要施策を着実に実践されてきたことに改めて敬意を表したいと思います。

 私の任期中で完結できるものではありませんが,改革の流れを着実に継承できるよう,次の施策に注力したいと思います。

 (1)技術分野の開拓
 「もの」から「こと」の時代に移行していると言われます。画一的な「もの」を大量生産する時代から,多様な社会・文化・個人が必要とする「こと」を叶える技術を如何に実現するかが求められているのだと思います。大西元部門長が仰る「テーラーメイド工学」はまさにその代表例であり,斉藤元部門長の仰る「やりたいこと」に繋がるものだと思います。産業応用部門の将来の発展に向けて,従来の技術分野とともに,上記を見据えた新たな技術分野の開拓を進めたいと思います。そのためには有益な国内学協会との連携も検討して行きます。

 (2)国際化の推進
 産業応用部門が推進してきたこれまでの国際化施策の流れを加速します。次項の英文論文誌の充実はもちろんですが, 技術委員会が企画する国際ワークショップの活性化,IEEEに加えてアジア地区の学協会組織との連携,海外会員の増員策などを推進します。

 (3)部門論文誌の充実
 国際化推進の要となる部門英文論文誌(IEEJ Journal of Industry Applications)のSCI登録に向けて,論文誌の投稿・掲載件数の増加を目指します。部門英文論文誌はアクセスフリーなので世界中の研究者・技術者から広く読まれるメリットがあります。また,和文論文誌査読システムの改善と検証も併行して進めます。

 (4)会員サービスの向上
 25周年を記念すると共に,会員の一体感と部門活動の活性化を目差して,産業応用部門のロゴの公募を行いました。産業応用部門大会の会場にて会員各位の最終投票によって決定されます。皆様の積極的な投票を期待しています。ロゴの公募を一つの契機として,会員各位の自由闊達な議論を喚起し,部門会員へのサービス向上を促進します。

 (5)部門会計の独立性
 部門活動で得た収益は出来るだけ部門会員に還元できるのが理想的です。論文掲載料の補助,人材育成事業などは会員サービスに直結します。現在進めている国際会議や産業応用フォーラムの剰余金の効果的な運用はもとより,様々な収益向上策の検討が望まれます。容易に部門独立会計に移行出来るものではありませんが,実績を積み上げることにより一歩ずつ前進したいと思います。

 25年前に諸先輩の大変なご努力により創設された産業応用部門ですが,更なる発展には会員諸兄の参画が重要であることは論を待ちません。是非とも忌憚のないご意見をお寄せください。頂戴したご意見は部門役員会や関係会議体で議論し,産業応用部門の運営に役立ててまいります。(以上)

©2009 The Institute of Electrical Engineers of Japan